約 4,506,275 件
https://w.atwiki.jp/suteteco/pages/184.html
メイリンの手紙 114 :メイリンの手紙 [sage] :2005/12/22(木) 13 56 04 ID ??? Bさんへ この頃ボケの大増殖でツッコミの供給が間に合いません。 正直私一人じゃとても辛いです。 あの濃いキャラ達にツッコめるのはあなたしかいません。 暇な時でいいんで応援に来てください。 お願いします。 思いつきで書いた、今は反省している。 http //anime.2ch.net/test/read.cgi/shar/1134955306/114
https://w.atwiki.jp/mcjapan/pages/28.html
▽ ポスター ここではMadnessシリーズ作中の背景にさりげなく配置され、謎や笑い、衝撃の事実などを提供するポスターの数々をご紹介。1~9までの文責:旧管理者 最終更新:12年2/13 日本語訳部分を改稿 10ポスターはまだです。 7.5も。 MC1のポスター MC2のポスター MC3のポスター MC4のポスター MC5のポスター MC5.5のポスター MC6のポスター MC6.5のポスター MC7のポスター MC8のポスター MC9のポスター Madness Combat ポスターはありません △ Madness Redeemer "WANTED" 主人公が指名手配されているのだと考えて構わないだろう。 ただしMadness1の主人公の行為が関係しているのかどうかは定かでない。 "employee of the month" 「今月の従業員」と読む事ができるが、何のための被雇用者なのかは現在もなお不明。 "RICH"とは「金持ち・豊か、豪華」等の形容詞なのか、それとも人名なのかもわからない。 ちなみに、この画像のように衣服の色が少し濃い人物は登場しないので捜しても無駄。 "ALF!" ALF(アルフ)とは、結構昔のアメリカのテレビドラマ。NHKでも放送された。 "cat?"と書いてあるのは、この主人公である「アルフ」の好きな食べ物が猫だからだろう。 △ Madness Avenger ポスターはありません △ Madness Apotheosis "The Sheriff wants you" 「シェリフはあなたを求めています」 「彼の指をひっぱって」 とある。"~wants you!"のネタ元は「アンクル・サム」であり "pull~finger"は古典ジョークの一種。差し出された指が引っ張られる事を合図に 屁またはゲップなどの体内ガスを放出するというもの。 要するにこのポスターはただのジョークであり和む。 "1337 crew" Madness Combat世界初めて「1337 crew」という言葉が登場したのがこのポスター。 「エリート(1337)チームに入ろう」(→「1337」)と戦闘員の募集をしている。 この作品から登場した黒眼鏡の一団だが、Madness1で主人公のパンチをよけた ラジカセの人物の方がまだ強そうに思えてならない。 "The Passion" Madness Apotheosis発表の約3ヶ月前の2004年2月25日にアメリカで公開された映画 「パッション(原題:The Passion of the Christ=キリストの受難(殉教)」の影響によるものだと思われる。 "COMING SOON"と書かれた通り、Jesusは今回も死亡してしまった。 "club M" 大きい画像はこちら 以下テキスト +... DJ TrickyM You know him, you love him, you must have him. This contender has two encounters under his belt, and this time around we guarantee some slaming hard face rocking results. So keep your theeth clenched, eyes shut, and receive unto you the greatest bash fest we could possibly hope for. Cheshyre This one hails all the way from Seans house, he is the only one awesome enough to stand up to the challenge of setting up the night for some hardcore beats. You woln t be dissapointed. 拙訳: DJ TrickyM 彼を知ってるな?彼が大好きだろう?彼なしじゃいられないだろう! 彼は2つの戦いをやっつけてきた。そして今回は、みんなに保証しよう。 顔面にすごいのをぶちかます結果がきっとやってくるってことを! だから歯を喰いしばって、目を閉じて。そして受け取りたまえ! すてきなイベントをきみに。それが私たちの願いです。 Cheshyre こいつははるばるやってきた!ショーンの家から。 彼こそがハードコア・ビートでこの夜をブチ上げるただ一人の挑戦者だ!めっぽういかす。 期待してくれよな! ※「two encounters」はRedeemerとAvengerで戦ったことを指していると 考えていいのかもしれません。 そして「some slamming hard face rocking results」はMC4の最後で 顔面に銃撃を受けたクラウンとハンク、あるいはさらに他の犠牲者らも含めて 示唆しているのかも。 "Hank" この作品、このポスターによって初めて一般に主人公の名前が公開された。 "volly(?)ball " ここではスペルにeが抜けた「volleyball(バレーボール)」だと判断する。 バレーボール実技試験(または予選)の参加者(志望者)が署名をするための張り紙 なのだろうが、見ると"Hank"のサインもある。 字が汚いせいか"Wimbleton"はWimble"son"にも見える。 一文字違いの他人か、いたずら書きか、それとも字が汚い(あるいは自分の名前を書き間違えた) ハンク本人がバレーボールをしたいと望んでいるのかは不明だが、別にどうでもいい。 △ Madness Depredation "1337 crew:その2" レイアウトもテキストも4の時と同じように見える。 しかしよく見たら微妙に違う。 "FBI-9!" 銃の広告であるようだ(この銃は架空のもの)。 下にスペックその他が細かく記載されている。 大きい画像はこちら。 以下テキスト +... TRY THE NEW... FBI-9! Chambered for the 11.72mm short cartrige 40mm Launcher standard Legal in 23 states (mostly the south) Comes in cobalt blue, or menacing black Upgrade model includes water ballon launcher 拙訳: FBI-9! 薬室の規格は11.72ミリ・ショートカートリッジ 40ミリランチャー標準装備 23の州で合法(所持が)です 色タイプはコバルトブルー、メナシング(威嚇的)ブラックがあるよ アップグレードモデルは水風船ランチャーがつきます ※…「威嚇的」というより「驚異のブラック」、「危険なブラック」とでも言うのでしょうか。 とにかく危険な香りのただよう黒ということらしい。 "Club M _ " 閉鎖に追い込まれたようです。なんだかかわいそうな気もしてきます。 いきなり踏み込んで暴れられたり、ゾンビを作られたり、また暴れたり、 自爆死されたりして平気な人間はいません。 でもクラウンだし大丈夫でしょう。 ポスターの文面はクラウンの部分に変更が加えられている。 大きい画像はこちら。テキストは以下。 +... DJ TrickyM Tricky will not die, ever! He has recently had an attempt on his life, but that woln t stop this birdy-spinning ,maniac out of the circuit for long! Expect HORRIBLY wonderful things from this well established favorite! (拙訳) トリッキーは死にやしないんだ、けして!最近彼はあやうく殺されかけたけれど、 そんな事では鳥もスピンする飛び出す熱狂的長期回路は止められない! でも、この定評のあるお気に入り、恐ろしくて素晴らしいあれこれは例外さ! (本当に拙訳過ぎてすいません。まったくわかりません) △ Madness Combat 5.5 "Party Cancelled" 「パーティー」が取り止めになってお怒りです。大きい画像はこちら 以下テキスト +... Party Cancelled Right now, god damn NEXT PARTY When our cause goes unopposed. There are those who act to undermind. 拙訳: パーティー中止。 今中止。おのれ~。 次のパーティー:我々の目標に邪魔が無くなったとき。 ここにはいう事をきかないものらが存在する。 "我らはなおす。" 大きい画像はこちら 以下テキスト +... Join the A.A.H.W. ELITE We must not be stopped. We will prevail. This world is broken. We will repair it. UNITY THROUGH PURPOSE Submit now to give yourself a safer future. To protect normality. 拙訳: 「A.A.H.W.」エリートになろう! 止まるべきでない。我らは優位だ。 世界は破壊された。我らは修復する。 一丸となるために! 安全な世界に向かって飛び込め。 ノーマリティーを守るのだ。 "Higher Ranks L33T(7のと同じ)" コンスタ(MC7)のポスターと同じです。目の部分の色以外…。 "これは食べ物だ。っつってんだろうがよッ!(7のと同じ)" 5.5の時点で既に営業してたんですねえ…。 "クラウンは撃たれて死にます" 予告の様子。 大きい画像はこちら よく考えると意味深なような…。 以下テキスト +... NOTICE ANYONE CAUGHT POSTING PARAPHENALIA REGARDS TO THAT GOD DAMN CLOWN WILL BE SHOT TO DEATH. DO NOT TEST ME. 拙訳: PARAPHENALIAの意味がわからないので想像で補ってますが、 例によってあてにしないで下さい。 予告 この掲示に気付いた人へ。クラウンは撃たれて死にます。 私を試さないで下さい。 "ネバダスーパーモール" 大きい画像はこちら 以下テキスト +... Coming Soon! Nevada Supermall Packed with more than enough products geared directry at you, yes, you! An entire mall built custom fit to your interests! It also houses the advanced training recuruitment center! Don t be shy! Visit today! 拙訳: じき来ます! ネバダ・スーパーモール てんこ盛りの十分過ぎる製品はあなたの、そうあなたのために! モールの全体はあなたを楽しませるために造られたのです! 加えて新兵教育・採用センターもあり! 恥ずかしがらないで!今日にもいらっしゃい! △ Madness Antipathy "1337 crew:その3" ポスターがひとりでに変化してるみたいで怖い。 "MADNICON 6" 大きい画像はこちら。 以下テキスト +... MADNICON 6- Holy Crap, Another intallment of this horrible, horrible event. People may bitch, people may moan, but who cares, it s going to happen anyways. Absolutely NO effort went into putting this together, and no talent or motivation was used in the creation of any part of this event. Avoid this one at all costs. "This fucking sucks!" -Roeper Ebert "God I hate Krinkels!" -Wade Fulp "What s with their faces?" -The New Yorker "What kind of name is Krinkels Anyways?" -Time "Where s the bathroom?" -Geier 拙訳: マッドニコン6 なんてこった!もう1つの恐ろしい、恐ろしいイベント。 人々はアバズレ。人々は間抜け。それがどうした。そいつはどのみちそうなるのさ。 モチロンのこと、皆々様は大変な努力を注いだりしねえんだ。 このイベントのために才能とやる気を注いだりはしねえんだ。一切。 どんな手を使ってでもこんなことに関わるな。 「これはまことにカスです!」 ─おすぎ&ピーコ 「神様!俺はKrinkelsが大嫌いだ!」 ─ウェード・ファルプ 「なんなの彼らの顔?」 ─「ニューヨーカー」 「Krinkelsってつまりどういう奴だ?」 ─「タイム」 「おトイレはどこですか?」 ─Geire (MC8で音楽を担当) "WANTED: その3" 以下テキスト +... WANTED For distorting reality, felony evasion, public urinaton, and crime. ONE MILLION DOLLARS 拙訳: 「指名手配」 「罪状:現実の歪曲・重罰からの逃走・公共の場での放尿・あと犯罪」 賞金100万ドル(約1億円) ※…何回も確認したけどpublic urinationはこうなるんじゃないかと…。 違う解答お待ちしております。あと公共の場というのは、この場合使用を 許可されたトイレと自分の家以外の場所のことでしょうね。 "車うります" MC4の幕開けを派手に飾ったあの車が売りに出されています。 売り手はハンク本人のようです。 大きい画像はこちら。 以下テキスト +... CAR FOR SALE Bentley R series V12 550 hp 150,321 miles 1 owner no AC no radio no cassette no powerwindows Well cared for, very powerful, minimalist design, and bulletproof. Perfect for the weekend warrior too timid to ride a chopper. Hell, you could probably crush a biker brigade before feeling any damage. This one s built like a tank! (719)555-4259 ask for Hank. 拙訳: 「車うります」 ロールスロイス=ベントレーRタイプ V型12気筒 550馬力 走行距離:150,321マイル(約24万1911キロメートル) ワンオーナー エアコンなし ラジオなし カセットデッキなし パワーウィンドウなし 「よく手入れしています。とってもパワフルで、ミニマリズムのいいデザイン。そして防弾です。 ヘリコプター(または改造バイク)に乗るにはいくじが足りないと感じる日曜兵士にうってつけ。 てか、多分出来るでしょう。バイカーの群れにむっとさせられる前にそれを潰せます。 これは戦車みたいなつくりです! (719)555-4259 ハンクに聞いてね」 ※…電話しないで下さい。 ちなみに、下半分を破られた同じポスターもある。 誰かが交渉のために電話番号の部分を持っていったのだろうか…。 "A.A.H.W" ハンクを名指しに1337員の入隊を募集しています。 海外ファンコミュニティにおいて7以降に登場するマスク1337を「A.T.P. Agents」と 呼ぶのはここから来ているようです。 以下テキスト +... A.A.H.W Agency Against Hank Wimbleton As if you had a choice... The only way to salvation is through unity of purpose. Join us and advance the ranks to become one of the coveted l33t crew. Or enroll in our special A.T.P. (accelerated training program) to give you all the edge you need to enforce the will of the whole. CONTACT YOUR LOCAL RECRUITER! 拙訳: 「ハンク・ウィンブルトンに対抗する機関」 もしあなたが選ぶなら… 救済への唯一の道は結束の中にあります。 我が機関に加入してさらに高いランクへ前進し、 みなが羨む1337クルーになりましょう。 または我々の特進訓練プログラムに登録することで あなたが求む完全なる意思に必要とする全ての力を得られます。 お近くの入隊窓口までどうぞ! "人生転換" blankimgプラグインエラー:ご指定のファイルがありません。アップロード済みのファイルを指定してください。 YOUR REASSIGNMENT BEINGS HERE 「あなたの人生転換はこちらです」とある。 MC6の後半の建物にあった「窓口」。 この建物には前半と違ってスミスが少なく、( + )顔の人が沢山居るのは 登録に集っていたためなのだろうか。 窓口には受付から「転換完了」までの進め方を三段階に分けが説明が表示されている。 "第一段階" blankimgプラグインエラー:ご指定のファイルがありません。アップロード済みのファイルを指定してください。 以下テキスト +... PHASE ONE Submit your Identity to the collective and be assigned a new Personal Identification Number. 第一段階: あなたの「アイデンティティー」を共同体へ提出し 新しい「個人用識別番号」の割り当てを受けてください。 "第二段階" blankimgプラグインエラー:ご指定のファイルがありません。アップロード済みのファイルを指定してください。 以下テキスト +... PHASE TWO Receive monies pass to attend the rehabilitation and crainial(※cranial) reorganization event. Hosted by our New Lord And Master. 第二段階: 金券を受け取り、再生と頭蓋骨を再編するイベントへ行ってください。 主催は私達のマスター、新たな救世主です。 "第三段階" blankimgプラグインエラー:ご指定のファイルがありません。アップロード済みのファイルを指定してください。 以下テキスト +... PHASE THREE Receive direction instructions from one of our certified l33t crew agents. They will point you to your appropriate function, and gladly answer any questions you might have. 第三段階: 公認1337エージェントに進路指示を受けてください。 彼らがあなたに適した役割を示します。そしてご質問があれば彼らは どのようなものでも喜んで答えます。 △ Madness Combat 6.5 "警笛スケジュール" 大きい画像はこちら ポスターと言うか隣のレバーの説明書きですね。 6.5ではスタート地点に5.5と同じポスターがいくつかありますが そこから先は一切目にしなくなります。 以下テキスト +... KLAXON SCHEDULE This lever is to be pulled no more than ten, and no less than three times a day. This rule not withstanding the "sherbert effect" and only applies on each prime numberd day after the fifteenth of Janurary and before eight years, three handred days after that. 拙訳: このレバーは1日に3回以上10回以下引きます。 このルールは「シャーベット現象」に抗するものではなく、 8年前から1月15日以降の各素数日、300日後まで適用されます。 (甚だしく自信なしです) "NVSM QUATRMASTER" これもポスターではありませんが、6でも看板を載せたのでついでにやります。 「クォーターマスター」とは主に軍隊の中の役割のひとつを指す言葉のようで、 陸軍、海軍等々で内容が異なっているようです。 この場合、陸軍での意味と考えますと一言で言えば「雑多な物品を供給する係り」のようです。 "自己改革" Self Improvement "you are not perfect until you are" 何かの決まり文句かと思えばそうでもないみたいです。 「あなたはあなたである限り完璧ではありません」と 読むのでしょうか。 △ Madness Consternation "Higher Ranks L33T" L33TはL33Tでも、血の黄色いL33Tが写っている。 募集しているのはやはりオーディターなのか。大きい画像はこちら 以下テキスト +... SO YOU JOINED L33T. NOT GOOD ENOUGH. Join the higher ranks right now. You get a cool helmet, some new hair, and a kickass assortment of weaponry to choose from! Aid me in my conquest today!!! 拙訳: 「エリート」に加わりましょう。 人数が不足しています。 上級兵士に今すぐ加わって下さい。 あなたはかっこいいヘルメットや、新しい毛、そして すてきな兵器のつめあわせを選び取ることが出来ます! 私の征服行為に助勢しましょう!!! ※…毛?… でも、なぜ加わると血が黄色くなってしまうのか。 そのへんの説明もしておいて欲しいところです。 "これはたべもの" 食べる物だそうです。 一応テキスト +... HAY U GUYS HOT DOGS! THOUSAND OF THEM! THEY ARE DELICIOUS! YOU MUST EAT THEM! IT IS FOOD! 一応拙訳: やあみなさん! ホットドッグ! 千のホットドッグ! おいしい! 食べるしかない! これは食べ物! "L33Tエージェント加入希望者" 大きい画像はこちら。 これから黄色い血になると知ってか知らずか、THE VICTIM候補生たちが続々と サインをしています。紙のはじまで埋まっていることに驚きです。 "第一の指令" もはや指名手配書ではなくなりました。 大きい画像はこちら。 テキスト +... PRIMARY DIRECTIVE HE must be tortured. HE must be abused. HE shall know my wrath. I shall enjoy his fear. 拙訳: 第一の指令 彼を拷問せよ。 彼を虐待せよ。 彼は私の懲罰を受ける。 私は彼の恐怖をじっくりと味わう。 "人殺し!" murder murder murder murder murder murder murder murder murder murder aaaaaaaaahhhhh fab blag door forn doof murderface zoop -l わけがわかりませんが恐ろしさは伝わってきます。 "トイレットシート(便座)" こんなものを売っているのは誰なのか…。 まさかオーディターじゃ…。 テキスト +... FOR SALE TOILET SEAT Herbl herbl herbl herbl herbl!!!! Ha ha ha ha ha!!!! Ha ha ha ha ha!!!! You will buy all my things! All my products! My essence is in you all! Obey me!!! XD XD XD Fadrtheoual BOO BOO BOO 拙訳: 「便座うります」 (Herbl~~Ha ha ha ha!!!!は無理) あなた、私のもの全部かいますね! わたしの全部の製品をね! わたしの大事なところ、全部あなたに! いうこときけ!(>ヮ<)(>ヮ<)(>ヮ<) Fadrtheoual ブーブーブー ただの便座じゃなさそうで怖い。 △ Madness Inundation "HOT DOGS" MC8のポスターはこれ一枚のみ。 つーか ま た お 前 か。 彼はオーディターの隣の部屋でホットドッグを売っていたので、 何度か部屋を出入りしていたオーディターと普通に出会っていたことに。 それでもホットドッグ売りを殺さなかったJesusは随分と優しいですね。 △ Madness Aggregation ポスターはありません。 △ 以上文責は旧管理者
https://w.atwiki.jp/princess-ss/pages/193.html
「ユゥ…今宵の…夜伽を……命じる。」 「はい、姫様、仰せのままに。」 四方に薄い紗を垂らした褥の中に、メイリンの鈴を鳴らすような声が響く。僕はその前に引き入れ られていた。いつも通りの言葉なのに、この言葉を言うときのメイリンは、いつだってうっすらと 頬を染めて恥ずかしそうにする。 僕がこの邸に来てから、三月(みつき)が経とうとしており、季節は厳しい冬へと向かっていた。 森で暮らすには、これからが最も厳しい季節だ。 僕の故郷の人たちは、この冬をどう乗り越えるのか気がかりで仕方なかったが、そのことは誰にも 訊けずにいた。訊こうとすると、頭の中にあの戦のときの光景が広がって、喉が詰まってしまう。 彼らは、猛々しいシン国の兵士たちと比べたら頭一つ分も小さく弱々しい僕等の兵の首を薙ぎ払うのに、 一瞬の躊躇もなかった。 もし、残った者たちが反抗したら──それが、女子供ばかりでも──迷うことなく、粛清されて しまうのではないのか? お願いだから、生き残っていて。 ぼくは心の中でいつもそう祈っていた。 父さんや兄さん達は、あの凄惨な殺戮の中で、どうなったのかは分からない。かなり、希みは薄いと思う。 せめて、戦に出ていなかった母さんや妹のユイは、無事でいて欲しい。どうか、無事で。 「ユゥ、なんだか上の空。心配事があるなら、話してみて。」 メイリンに話してみようかと思うこともあった。だけど──もし、無事じゃなかったら? いつか家族と共に、あの故郷へ還ることがぼくの心の支えなのに、その望みが断たれてしまったら、 僕はどうやって生きていけばいいのかすら分からない。 第一、数千の民の中に埋もれているはずのたった二人を、どうやって見つけてもらえばいいのかも、 見当がつかなかった。そう思うと、話してみようと思う度に、何故か踏みとどまってしまう。 「別に何でもありませんよ、姫様。」 僕はもやもやとした心の曇りを隅に押しやって、笑顔を作ってみせる。我ながら薄っぺらい笑顔だ。 「もぉっ。ユゥはいつまで経っても、よそよそしい……。それに、二人だけのときは、敬語はやめてと 言っている。」 メイリンはぷっと頬を膨らませて、拗ねた顔になった。僕を取り巻く特殊な状況には随分慣れてきたが、 この可愛さにはなかなか慣れない。この可愛らしい顔が、僕のことで表情を変えるのが、いつだって 嬉しくて仕方ない。 「馴れ馴れしい口を利いたら、ユイウ様に殺されます。」 メイリンの兄、ユイウ様は特に僕の態度に厳しかった。従僕のうち一人だけが主人格の人間に 馴れ馴れしい口を利いては、使用人全体の規律の緩みに繋がると一歩も譲らなかった。それはそれで 尤もな意見であると思うし、メイリンも反論はしなかった。 それに、僕自身も、メイリンに深入りしすぎるのは良くないと思うのだ。桂花の民の『クニ』はシン国に 滅ぼされたけれど、僕はどうやっても、桂花の民だと思っているし。 こうしてこの邸に馴染んで、表面上は従っていても、いつかあの山に還るべきだと思う。僕の体中の血が、 あの故郷の山を、懐かしい空気を、森に棲まう、僕たちを守る神々の気配を求めているのだ。 ただ、奴隷の身から脱して故郷への道を歩むには、知識だって必要だし、体を鍛えておくことも武術を 身につけておく言だって間違いなく役に立つ。それだけだ。 別に毎日熱心に書物を暗記したり、体を鍛えたりしてるのはそのためであって、決してメイリンの嬉しそうな 顔が見たいからではない──と、思う。 まあ、メイリンが嬉しそうな顔をするのも、悪いことじゃないからいいんだけど。 「…だから今は二人きりであって、人の耳など無いと言っておるのに。 ユゥはわたしより、ユイウ兄様の言うことを聞くの。」 形のいい唇をちょっと尖らせて、上目遣いに僕を見る。兄弟や両親だけでなく、この邸中の使用人にも愛され、 可愛がられているメイリンは、なんというか、甘え上手だ。使用人たちも男女問わず、姫様、姫様と呼んで 世話を焼きたがる。普通なら我儘放題に育つところなのに、メイリンは何故か細やかな気配りのできる 思い遣りのある女の子で、それがまた好かれているのだった。 まあだから、僕がメイリンを可愛く思うのも、何かしてあげたいと思うのも、普通だと思う、うん。 「いつだって君の言うとおりにしてるじゃないか、僕のご主人様。」 僕はメイリンの要求どおりに口調を変えて、座っているメイリンを抱き寄せる。 そして小さな顎をちょっと持ち上げて、桜桃のように瑞々しい唇に僕の唇を重ねた。 『夜伽を始めるときはまずくちづけから。』それが、メイリンとの約束だ。 メイリンの唇はとても、とても柔らかで、触れるときはちょっと緊張する。壊さないように、傷つけない ように、宝物のように丁重に扱わなければいけない気がする。 角度を変えながら何度か優しく唇を食み、湯浴みの後に緩やかに編んである濡れた髪をそっと撫でる。 近づいたメイリンの髪と肌から、湯を使った後のいい匂いが立ち昇ってきて、僕は軽く眩暈を覚える。 「そうやって優しくすれば、わたしが黙ると思って。ユゥはいつもずるい。……あっ」 頬、耳許へとくちづけを落としてゆき、首筋にくちづけたとき、メイリンは小さく声を上げた。 声につられて激しく吸い立てそうになったが、見える場所に跡を残すのは厳禁だ。ゆるくくちづけて あげる。 彼女の夜着の帯を解いて、白い薄布の下着だけの姿にすると、胸の先端がうっすらと勃ちあがって いるのが見えた。 「ここ、もう硬くしちゃってるんだ。つんつんにして、弄って欲しそうにしてる。」 「これはっ、そういうんじゃなくてっ、服を脱ぐと体が冷えるからその反応で……やんっ!」 少しからかってあげると、途端に真っ赤になって反論する。でも、勃ち上がりかけた先端を布越しに 指で撫でると、そこはすぐにはっきりと硬くなって存在を主張し始めた。 「姫様は身体の方が素直だね。ここは僕に、弄って欲しいって言ってるよ。」 メイリンの腰を強く抱いて、もう片方の手で胸の先端を転がすように撫でてあげると、僕の胸の中で 彼女は身悶えして快感を訴える。もう一方の胸も、口を近づけて布越しのままちゅっと吸い上げた。 「あんっ、それ、だめっ! まだ、脱いでないのにっ!!」 「駄目、なんて言うときは、大抵イイんだよね……? 本当に、身体の方が素直だ。」 下着を着けたままの胸のふくらみを手で持ち上げるようにして、その先端を再び口に含む。メイリンは 甘く叫んで弓なりに身体をしならせ、僕は支えきれなくなってそっと夜具に横たえた。 そしてその上に覆いかぶさるようにして、両胸を思い切り可愛がってあげる。メイリンは胸をたっぷりと 愛撫されるのが好きなので、右から左、左から右と交互に口に含んで、白い下着の布が濡れて透ける様を 楽しみながら何度も可愛がってあげた。 「布越しばっかりじゃ…やだあっ。直接……触って……っ。」 メイリンが焦れた声を上げる。白い下着姿で両胸の先端だけが淡い赤に透けた姿もなかなかに淫靡で 捨てがたいのだが、お姫様の要求とあらば仕方が無い。腰のところで留める帯はそのままに、合わせ襟を 左右に開くと白いふくらみが零れ出る。両手で包み込むように揉んであげると、メイリンは安心したような 吐息を漏らした。 「は…ぁ…っ」 「本当に姫様は、胸を触られるのが好きだよね。ほら、その所為で最初の頃よりも大きくなってきた。 僕のおかげだよ、嬉しい?」 「ユゥの……おかげ?」 メイリンはなんのこと? とでも言いたげに小首を傾げる。 「女の子の胸ってね、こうやって男に揉まれると大きくなるんだよ。知らなかった?」 「……しらなかった。」 メイリンには姉妹がおらず、性に関する知識の大半は、なにやら怪しげな本を読んでの『独学』になるので、 変な風に偏っている。妙なところで詳しいかと思えば、こういう普通のちょっとしたことを知らなかったりする。 「これからもたくさん揉んで、おっきくしてあげるね、姫様。」 耳許でそう囁くと、メイリンは不満顔で返した。 「こんな時まで、姫様って呼ばないでっ! ちゃんと名前で、呼んで。メイリン、って。」 勿論心の中ではそう呼びまくっているのだが、僕は極力メイリンの名を口に出して呼ぶのを避けていた。 だって、なんだか、勘違いしてしまいそうだから。僕とメイリンが対等な関係……というよりは、例えば、 恋人のような関係だと。 だから、いつだって大義名分が必要だ。 「それは、命令?」 「う……命令でなくても、その名で呼んで。」 「命令ならば呼ぶよ。」 命令なら、ただ従っているだけだと自分自身にも言い訳が出来る……訳だけど、こうやって眉を寄せて逡巡する メイリンを見てるのも好きだ。口をぎゅっと結んで、大きな瞳をくるくるさせてちょっとの間悩んでいる。 そして、いつだって最後には折れてくれるのだ。 「じゃあ……命じる。」 メイリンはちょっと不満そうに、でも可愛らしく頬を染めて、恥ずかしそうに小声で呟く。 「──メイリン。」 僕がそう呼んであげると、彼女の長い睫が揺れて、それから大きな黒い瞳が僕を捉える。 「もっと…呼んで。」 「メイリン、メイリン……可愛いね。」 可愛いご主人様をぎゅっと抱きしめてあげる。 「もっと。」 「メイリン。」 「もっと……あぁっ。」 メイリンは短く声を上げた。僕の手が下の繁みを探ったのだ。下着は上も下もすっかり肌蹴て、辛うじて腰の帯で 身体に残っている。着乱れた薄衣の下から惜しげもなく白い肌を覗かせ、甘い声を上げるメイリンは、いつだって 困ってしまうくらいに扇情的だ。 「随分物欲しそうに濡らしてるね……。胸を可愛がられるのが、良かった? 揉んでおっきくして貰うのが、 好きなの?」 「ユゥに……触られるのが……好き…。」 そんな思わせぶりな言葉で、立場の弱い奴隷を弄ぶのはよして欲しい。 僕がどんなに頑張っても、この巨大な中華の国の皇族であるメイリンの特別になんて、なりようがないんだから。 高貴な立場の人間には、特有の責任があることくらい、僕にも分かる。味噌っかすのような扱いだったけど、 この国と比べればあまりにも小さな取るに足らない『クニ』だったけれど、僕もかつて首長家の三男という 立場だったのだから。 若く美しく健康な娘であるメイリンが縁組もせずにいられる期間なんて、あといくらもない。これは儚い、 一時的な遊びに過ぎないのだ。メイリンにとっても、僕にとっても。 だからこそ、のめり込んでしまうのかもしれないけど。 「褒めていただいて、光栄ですよ。……こっちに、触られるのも好き?」 僕はなるべくよそよそしく答えると、彼女の繁みを掻き分けて、その奥の泉を探った。つぷ、と難なく指は、 その源泉を探り当てる。 「ああっ……んん、好き、すき……。」 メイリンはとろんとした瞳で、容赦なく追い討ちをかける。 もうメイリンにはなるべく喋らせない方がいいみたいだ、と思った。そうしないと、メイリンの言葉に甘く 翻弄されて、僕の心が壊れてしまう。 まだ何か言いたげな可憐な唇を、僕の唇で塞ぐ。歯列を割って侵入し、奥に隠れている舌を絡め取って、 言葉を奪う。 「…んんっ……。」 今の僕はメイリンを気持ちよくさせてあげるためのただの道具だ。それ以上でも、以下でもなく。 だから、ただ役割にだけ、徹すればいい。 彼女の体内に挿れた指を動かすと、細い腰が跳ねる。内側の肉襞は複雑な迷路のようで、いつまで経っても その全容は理解できないが、彼女が特に感じる所だけは、指が憶えていた。いつもの窪みを擦り上げると、 メイリンは身体を捩って悲鳴を上げた。 「んっ……、は、あぁっ!!」 逃げられてしまった唇を追いかけて、空いたほうの手でメイリンの小さな顎を捕まえる。こちらを向かせて、 有無を言わせずもう一度塞ぐ。 逃がさない。もっと、悦んでしまえばいい。僕の指で、僕の身体で。僕の、腕の中で。 何も考えられなくなるほどに。 刺激を強くしてあげると、メイリンの内側の締め付けが一層きつくなった。それに合わせて、もっと奥の方 へと指を動かす。 「んっ……、ん──っ! んん────っ!!」 そしてついに、メイリンの身体がびくびくと痙攣するように震えた。その波に合わせて奥の方を刺激して あげると、長い間身体を震わせていた。 「随分、気持ち良くなってたみたい……僕の指がドロドロだ。」 白い肌着のほとんどを肌蹴させてくったりと横たわるメイリンから、僕はにちゅ、と指を引き抜いて言った。 指は粘着質の蜜に濡れて光っている。 「ふふ、やらしい匂い。」 その指を舐めながら、メイリンの匂いと粘り気を愉しむ。いつも着飾って、上品な香を焚き染めている メイリンも、ここだけは動物的な匂いなところが逆に興奮する。そうやっていると、メイリンがとろんと 蕩けた瞳を恥ずかしげに伏せるのも、またいい。 「命令して。このあと、どうして欲しい?」 メイリンはかあっと顔を赤くした。いつだって、ちゃんと言えるまで焦らしてあげるのだ。 「ユゥの…それを……わたしの…ここに……っ。」 メイリンは耳朶まで真っ赤に染めて、途切れ途切れに口に出す。 「どこに? それじゃ分からないよ。」 笑みを浮かべて聞き返すと、メイリンはふるふると震えながら、肌蹴た下着姿のまま、脚を開いた。 密やかな繁みが間から覗き、躊躇いがちにその中心部を指し示す。 「あ……、ここに…っ、挿れて…。」 「仰せのままに、メイリン。」 可哀相なくらいに真っ赤になっているのでこの辺で許してあげることにする。 ほとんど用をなしていなかった下着の帯を解いて、身体に纏わりつく薄布を剥ぎ、メイリンを生まれたままの 姿に解き放ってあげる。そして僕もまた邪魔な衣は全て脱ぎ捨てた。 無防備に横たわるメイリンの腰を引き寄せると、その中心へ、僕の漲った分身をゆっくりと埋め込む。 「──────っっ!!」 奥まで到達すると、メイリンは僕の背中に軽く爪を立て、脚は爪先までをぴんと伸ばして仰け反る。軽く 達したのかもしれない。 でも僕は、余韻を味わう暇など与えずに、無遠慮に腰を打ちつけた。 「あぁ────っ!! やっ、待っ、激しっ、…ユゥっ!!」 「メイリンがいけないんだよ」 僕に責められてメイリンは、大きな瞳に涙を浮かべて、艶のある編んだ黒髪が乱れるのも構わずにいやいやと 首を激しく振る。 「こんなに濡らして、内の襞も物欲しそうに僕に吸い付かせて… これじゃあ、ゆっくりなんてしていられないだろう? ほら、こうして突く度に内が動いて、僕を締め付けてくるよ。わかる?」 答えなど、言わせるつもりもなかった。身体の内も頭の中も、僕でいっぱいにしてしまえばいい。 このときだけは、僕だけを見て、僕だけを感じて、二人で一つになればいい。 「や……っ、だめ、わたし……、おかしいっ、……また…」 激しく奥まで蹂躙されながら、メイリンは切れ切れにそう告げる。 「貪欲なメイリン。また気持ちよくなっちゃうんだ。 いいよ、どれだけでも快感を貪るといい」 僕はメイリンの片足を抱え上げ、少しだけ角度を変えてまた腰を打ち付ける。メイリンの内部はどこもかしこも 敏感になっていて、新しい刺激を悦んで迎え入れた。 「やぁっ、あぁ────っ、あっ、あぁ───……っ」 悲鳴と同時に、内部の締め付けが激しくなった。僕も一緒に達してしまいそうだったが、ぎりぎりのところで 持ちこたえる。 「またいっちゃったんだ…。一体何回いく気なの?」 僕は少し笑みを浮かべて、メイリンを見下ろした。 本当にメイリンは、なんて可愛い、素直な身体の持ち主なんだろう。 男なら誰だって、メイリンに夢中になるに違いない。 「最後に、後ろから可愛がってあげようね…後ろからされるのも好きでしょう、メイリン?」 「あ……っ、はぁ……っ」 メイリンは何か言おうとしたが、浅く息をするばかりでもう言葉にはならないみたいだ。表情も、身体も、 身体の内もとろとろに蕩けている。 僕はメイリンの向きを変えてうつ伏せに寝かせてあげ、腰を持ち上げようとしたけど、もう足腰が立たない らしい。こんなになるまで感じてしまうなんて、なんて可愛い。 うつ伏せ寝のまま脚を開かせて、その間から侵入した。 力の無くなったメイリンの身体を後ろから抱きしめながら、最後の力で彼女の身体の最奥を求めるように 腰を打ち付ける。 「────っ!! ──────あっ!! ──────あぁっ!!!」 メイリンの悲鳴はもう声にすらならない。恍惚の中、僕の方も大きな快感がせり上がって来るのを感じた。 「出すね、メイリン。」 短く告げると、僕はメイリンの内から僕の分身を引き抜いた。 勢い良く飛び散った飛沫は、メイリンの背中を汚した。 * * * この邸に来て三日目に──メイリンが言った通りに──僕は手枷を外して貰った。メイリンが、お許しが 出た、と言って嬉々として鍵を持ってきたので、僕はメイリンの父親に直接会うことはなかった。 メイリンの父親は──この邸の使用人達に聞いたところによると──独特の存在感を持つ、不思議な人らしい。 言い換えると、奇行癖のある変人、とも小声で言っていた。 この巨大な中華の国を統べる皇帝の血に連なる人であり、この家の高貴さの源でもある。現皇帝の即位に 伴って権利を放棄したが、それまでは皇位継承権第三位という高い地位にいた。メイリンは、その地位は 高い実務能力と教養、武術の腕を兼ね揃えているが故の評価であったのだ、と誇らしげに言う。 この邸の使用人にとっても、この邸の主人は横暴でも吝嗇家でもなく、給金の支払いも良いし、使用人の 身内の祝い事にまで贈り物や祝い金をはずんでくれる良い『雇い主』であり、尊敬すべき人であるようだ。 三月(みつき)もの間、この邸にいて、僕がその『父上様』に会ったのはほんの数回。そもそもあまり邸に 帰ってこないし、帰って来たとしても僕は北の棟には立ち入り禁止を言い渡されているので、この とんでもなく広い邸では、ほぼ顔を合わせる事もない。僕の『クニ』で言えば、ちょっとした集落 くらいの規模があるのだ、この邸は。 さらに、メイリンの『母上様』に至っては──正直、会うのを恐れてはいたが──その気配すら、感じた ことはなかった。 「母上様は、近頃大変、忙しい。」 そうメイリンは言う。メイリンの母親は朝廷の高官で、俗に宰相位と呼ばれるものの一つ──具体的に言うと、 中書令──に就いており、ともかく忙しい。 連日のように深夜まで仕事で、たまの休日に帰ってきても寝ているのがやっと、起き出すとまた仕事に行って しまうらしかった。 「こいつをぶった斬って下さるとしたら、母上しかいないと思ったのだが、お忙しいのでは仕方がない。 お体を壊されぬとよいのだが」 と、苦々しげに呟くのはユイウ様だ。メイリンの父親はこの邸において絶対的な支配力を持っており、 その父親が僕の存在を許している限り、長公子であるユイウ様も、二公子であるスゥフォン様も、簡単には 僕をどうこう出来ないらしい。どうにかできるのは父親に匹敵する権力者、つまり母親しかいないというわけだ。 メイリンの母親は女性でありながら武術の素養があり、この家ではユイウ様にもメイリンにも、そのほかの 兄弟にも剣術を初めとした武術を教えたのは母君であるという話だった。 朝廷の官僚である母君にとっては、剣術も武術も教養の一つであり、王都で催される武術大会では剣術で そこそこの成績を上げるほどの腕前で、しかも人一倍貞節などの倫理観には厳しいと聞くと──本当に 遭遇しなくて良かった、と思ってしまう。 メイリンの兄、ユイウ様とスゥフォン様には、初対面のときは殺されるかと思ったけど、その下について 習い始めてみると、公平で公正な方たちだった。時々──いや、しばしば──厳しすぎるような気はしたが、 それでもわざと嘘を教えたり、命の危険に晒すようなことはしなかった……と思う。 「言ったであろ? 兄上様達は素晴らしく有能で、将来を嘱望されておるのだ。 あのお二人に勝る教師役は、そうはおるまい。」 メイリンが嬉しげに言う。勿論二人の兄が、大人しく僕なんかの教師役をやっているのは、可愛い妹としての メイリンの『必殺技』が効いているからなのだが。本当にメイリンは、毎日まめに『兄上様達』に対して、 その『素晴らしい教師ぶり』を絶賛し続け、二人の兄を陥落させるのに余念がなかった。そしてちらりと 聞いたのだが、彼らの『父上様』も僕の教育について口添えをしてくれていたとかいないとか。 そして、学べば学ぶほど、迷いは深まった。 なぜ桂花の民は、そして首長の立場にあった父は、この強大な国と戦を構えようなどと思ったのだろう。 多少なりとも物を知っていれば、敵いようがないことくらい分かりそうなものなのに。 首長として交渉を行い、誰よりもシン国のことを見ていたはずの父やその周りの人々は、一体、何を思って あの選択をしたのか。本当にただ窮乏していたのか。 他に道はなかったのか。 メイリンがぼくに問いたいことがある……と最初に言ったけれど、それが何かも分からなかった。 ただ──迷う。 知れば知るほどに。 深まれば深まるほどに。 * * * 「勘違いするなよ」 ことあるごとに、この邸の長公子であるユイウ様は僕に釘を刺す。 「妹は誰にだって優しい。例えこの国に反逆して簡単に滅びた民の生き残りであろうと。 メイリンが主人、おまえは下僕、そのことを忘れるな。」 「勘違いなんかしていません。」 僕は極力感情を殺して、平坦に隙なく応える。勘違いなんかしてない。してない……はずだ。 「妹はいずれふさわしい家格の男と縁組をする。おまえはそれまでのちょっとした遊び相手だ。 外で遊び廻られて、悪い評判が立ってもいけないからな。 あくまで自分の立場を弁えて、出過ぎた真似はするな。必要以上に馴れ馴れしくするな。」 分かってる。 分かってるから、言わないで欲しい、そんなこと。 いずれメイリンが他の男のものになるなんて、考えただけで胸が壊れそうになる。 でも最初から、分かっていたはずだ。メイリンはこの国の、高貴なるお姫様。 僕は敗戦国から拾われた、ただの奴隷。 ちょっといい扱いを受けているのは、メイリンの気まぐれだ。深入りなんかしては駄目だ。 「妹はどこに行ったって男共に物凄く人気があるんだ。…『学院』でも、当然そうだ。 俺とスゥフォンは協力して、妹に近づく悪い虫は徹底的に排除し続けて来た!! …卒院してからは 弟を通じて、片端から妹に近づく奴は潰しておいたのに…っ!! どうして、おまえみたいなのが出てくる?!」 『学院』というのはメイリンが毎日通ってる学問所だ。貴族の中でも特別に選抜を受けた優秀な者 しか通うことが出来ない──つまりメイリンも特別に優秀ってことだ。 女の生徒は少なく、というよりほぼ男ばかり。それでも身分が高いから既に許嫁がいるような男も多い そうだが、当然メイリンみたいな女の子が居たら好きになってしまう男も少なくないはずで。 どうやらユイウ様を始めとしたメイリンの兄弟達は、そうやってメイリンに近づいてくる男を片っ端から 脅迫したり、権力で圧力を掛けたりして遠ざけておいたらしい。おかげで、メイリンはあんなに綺麗で 可愛くて優しいのに、『学院』の中でメイリンと恋仲になることができた男は一人もいないのだそうだ。 ──それが裏目に出たんじゃないですか? とは、例え思っていても、口に出さないくらいの分別は持ち合わせていた。 僕にも妹がいるから分かる、妹が可愛くて仕方がなくて、守ってやりたいという気持ちが。 そういう点では、僕はユイウ様達に共感を持っていた。 可愛い、可愛い妹。傷が付かないように守ってやりたい。大事に、いつか巣立つその日まで。 むしろ巣立つ必要なんかない、ずっと守ってやりたい。 そしてまた、メイリンの気持ちも分かるのだ。 成長して年頃になり、異性への興味だって芽生えてくる。身体も丸みを帯びて、女らしくなってくる。 なのに守られ過ぎて、言い寄ってくる男の一人もいなくて。 試してみたい、という気持ちだって、出てくるだろう。女としての自分を。 そしてそこで見事に板挟みになっているのが、僕。 心情としてはユイウ様の言ってる事のほうに分があるとは思うけれど、僕の主人はメイリンだし。 「腕は上がった? ユゥ。わたしと、手合わせしようっ!!」 僕がユイウ様に剣を教わっていると、メイリンが割って入ることがあった。メイリンの通っている 『学院』でも剣術を始めとした武術を教えているし、勿論その前からメイリンは母親に手ほどきを 受けているし、何と言ってもメイリンは従軍したことさえあるのだ。 でも、メイリンの外出にはいつだって護衛が付いているわけだから、闘うのなんか他の屈強な男にでも 任せておいて、メイリン自身が強くなる必要はないと思うんだ……なんて言ったら、真っ赤になって 怒り出すんだろうな。 それでもなお、メイリンのあの綺麗な身体に傷をつけるなんて、それだけで罪悪であるように感じる。 『学院』での武術の稽古のために、メイリンの肘や脛なんかに青痣や擦り傷が出来ているのを見つけると、 なんだかもうたまらない気持ちになる。 メイリンみたいなすっごいお姫様は、ずっと誰かが守ってあげればいいと思うんだ。 例えば僕とか……と言うには、まだ弱すぎることは分かっているけれど。 というわけで僕は、メイリンと手合わせなんかしてもひたすら防戦一方なのだった。 自分から手合わせしよう、と言うだけあって、メイリンはそこそこ強い。さすがにユイウ様ほど強くは ないけれど。 斬撃に重さはなくとも、相手の弱点や隙を見逃さず、素早く正確に攻めて来る。いつもユイウ様が 言うような、力みと無駄のない理想的な動きというのは、こんな風に美しいものなんだ、と、メイリンの 剣技を見ていて思う。 そして最後には大抵、「手を抜くなー!! 真面目にやれっ!!」と本人に怒られてしまうわけなんだけど。 でも、どんなに怒られても、あの、実は白くて柔らかくてふにふにな身体に、刃の無い木剣とはいえ 打ち込むなんて、僕には到底出来そうも無かった。 そしていつも「虫ケラは死ね」などと言って問答無用で厳しいユイウ様だけど、こんなときは何故か さりげなくメイリンの方を宥めてくれるのだった。 * * * メイリンの次兄、スゥフォン様から習ったのは、この国の在りよう。 あまたの州と、その中にある直轄地と地方王の所領。気候と風土によってどのように収量が変化するのか。 千差万別の耕地能力と耕作能力を査定して、その中で租税を徴収するための綿密な記録と、それを基に した複雑怪奇なまでの計算式。 緻密に組み立てられた構造の中で、人の流れも財貨の動きも、文化の伝播すら管理されていた。それを 可能にする、膨大な数の高等教育を受けた官吏の存在、その手足となって働く、更に膨大な数の胥吏達。 その膨大な人々を支配するための、数々の論理と倫理。そして過去から学ぶための、気の遠くなるような 事例の蓄積。 スゥフォン様から習っていると、しばしばこの国のあまりの大きさに眩暈がする。大きければいいのか というとそういう訳でもなくて、広い国土を余すことなく管理し、支配権を行き届かせ、違反を許さない 為にかなりの労力を費やしているのだった。 この国がこの形を保つために常に費やしている労力に比べれば、僕達の『クニ』を潰すときに動かした 力などは、ほんの小指一本分くらいだ。 僕らの『クニ』の行く末を決めた人たちは、このことを分かっていたのだろうか。 そして、メイリンから習ったのは──例えば、花のこと。 メイリンの部屋には、沢山の植物の図誌が置いてあった。メイリンは、そのほとんどを憶えているのでは ないかと思うくらい、植物に詳しいのだ。 対生、互生、輪生、根生。それから、奇数羽状複葉、三出複葉、二回三回複葉、掌状複葉。草の葉の 広げ方にさえ、分類して名前がつけてあった。 花だって、雄しべと雌しべ、花弁と萼だけでなく、葯、花糸、柱頭、花柱、子房、花床、花柄などと、 細かく名前がつけてある。花弁の名前も、花の形状に応じて、舌状花冠、筒状花冠、側弁、唇弁、 上唇、下唇、、旗弁、翼弁、龍骨弁、仏炎苞などなど。ありとあらゆる形状、ありとあらゆる部分に 名前がつけて、分類してあった。 こんなことをしてなんの役に立つのかと問うと、 「命名し、分類し、明らかにすること。それ自体に価値がある。」 と返された。よく分からない。 一番吃驚したのは、イネの仲間の花についてだ。イネの仲間と言っても、そのほとんどは米や雑穀が 取れるわけでもない、畑の脇に生える雑草だ。そういう取るに足らない──と、僕達が思っている── 草についても、熱心に穂の花序を調べ、痩果を包む果胞の形状を調べ、根の形を調べ、場合によっては その小さな花を分解して雄しべや雌しべの数を調べてあった。勿論、それこそ米粒より小さな花のこと なので、虫眼鏡とかを使った気の遠くなるような作業になるんじゃないだろうか。 こんなにも役に立たない草を苦労して分類するなんて、とんでもない物好きがいるものだと思っていたら、 メイリンは「存外に役に立つこともある」と言う。シン国で行われている、イネとその仲間の『掛けあわせ』 のことだ。 異なる種類の植物でも、『あいのこ』を作ることがある。それは知っている。 それを利用して、この国では、新しい種類の植物を生み出す試みが行われていると言うのだ。 そのときに掛け合わせる植物は、あまりに遠い仲間であると掛けあわせが成立しない。近すぎると、 新しいものが生まれない。むしろ、遠方から取り寄せたような、ちょっと変わった(と言っても、同じイネ) 仲間だと、上手い具合に両方の長所を兼ね揃えた新しい品種が出来るとメイリンは語る。そのときに、 どのくらい近い仲間なのかを判断するのに、この目の奥が痛くなるような地道な研究が役立つのだそうだ。 メイリンの語るシン国の技術の話は、僕らの『クニ』の普段の生活からすると、荒唐無稽な夢物語に思えた。 シン国では一部の場所で、春に咲く花を冬に咲かせることすらできるのだと言う。それは仙術の類ではなく、 花の咲く条件を調べつくした末の特別な技術であるのだと彼女は語った。 本当にメイリンは花のことには何でも詳しくて、いまはこの国のお姫様でも、生まれる前はやっぱり花仙 だったんじゃないか、と僕は時々思ってしまう。 メイリンから物を教わるのは、いつも楽しかった。 メイリンの兄上、ユイウ様やスゥフォン様に教わるのが別に楽しくないわけではないが、彼らから教わる ときはただひたすら知識なり技なりを憶えこんでゆくだけ。 でもメイリンとの時は、必ず一通り話し終えたときに、僕の話を聞いてくれる。 「見た目とか、部分の形状とかを文字と図だけで吃驚するほど細かく分類してあるけど、草ってそれだけ じゃないんじゃないのかな。僕達は、草の匂いとか味とか、葉っぱに触ると手が切れるとか痛いとか、 何の動物がよくその実を食べるかとか、いつも水辺に生えてるとか、畑に生えてくると根っこが横に 広がって困るとか、草の汁が切り傷に聞くとか腹痛に効くとか、そういうことで憶えてるけど。」 「森に火入れをしたあと、真っ先に生えてくる草木もある。奴らの種は土に埋もれて、炎が来るのを 待っているんだ。そしてそういう植物は、大きくなると大抵燃え易い。」 とか、そういう、僕の育ってきた中で知ってる、何の変哲もないことを話したりする。お義理かも しれないけど、メイリンが桂花山での暮らしのことを楽しんで聞いてくれると、途端にその話が 宝物のように思えたりするから不思議だ。 そんなことを話し合っていると、いつも知らぬ間に夜は更けた。 夜が更けると、それはいつだって僕とメイリンの時間だ。 その中には当然……その、『夜伽』だって含まれる。 『夜伽』をした夜は、抱き合って眠った。 『夜伽』のない夜は、瞼が重くなるまで語り合って、手を繋いで眠った。 冬の深まる中、暖かい誰かと眠るのは、メイリンの言ったとおり、とても、心地良かった。 * * * メイリンに深入りしちゃ駄目だ、と、一人のときは結構本気でそう思っているのだ。 でもメイリンは、僕がどんなに決心しても、笑顔一つで易々と打ち砕いてしまう。 「ただいまっ! ユゥ。兄上様達から出された『宿題』は終わった?」 メイリンは帰宅すると、真っ直ぐに僕のところへやってくる。いつも抜群の破壊力だ。 「あのね。」 メイリンは可愛くくふふ、と笑った。 「今日は学院で、先生からいいお菓子を頂いたの。こっそり持って帰ってきたから、あとで半分こしよ。 あ、一個しかないから、他の人には内緒ね。兄上様にもね。」 「一個しかないなら、普通に姫様がお召し上がりになったらいかがですか。」 他人の目があるのでそっけなく敬語で返すと、メイリンはぷくっと膨れ顔になった。 「もぉっ。なんでそういうこというかなあ、ユゥは。一緒に食べたいから、わざわざ持って帰ってきたのに。」 策略だ。 こんなに可愛いのは、何かの策略に決まっている。 そしてこんな策略を考え付くメイリンは、天才に違いない。 メイリンの持ってきたお菓子は、木の実を炒って糖蜜で煮絡めた餡がぎっしり詰まった焼き菓子だった。 メイリンはそれを油紙にくるんで、大事そうに持ってきた。 胡桃、松の実、椎の実。滋養のある大粒の実は、森の中でもご馳走だ。 それが綺麗にアク抜きされて、炒られて蜜に絡まって、美しい型の焼き菓子の中に納まっている。なんだか 上品に畏まった、芸術作品みたいだった。 それはそれとして、美味しいお菓子を食べるときの女の子っていうのは、どうしてこんなに幸せそうな 顔をするんだろう。整った顔をほくほくと緩ませて、時々驚いたりしながら菓子職人の健闘ぶりを讃えている。 僕は手元の菓子はひとくち齧ったままで、そんなメイリンをぼうっと見ていた。今のメイリンを少し齧ったら、 きっとどんなお菓子よりも美味しいに違いない。 舐めて、齧って、食べてしまいたい……。 「どうしたの、ユゥ。」 メイリンに声を掛けられてはっと我に返り、目を逸らす。 「食べないの? 美味しくないの? 気に入らなかった?」 くるっとした大きな瞳が、心配そうにこちらを覗き込んでいる。 「いやあの、……こういうの、妹のユイに食べさせてあげたら、喜ぶだろうなあ、って思って。」 見透かされたみたいで動揺したのか、それとも木の実が森の冬を思い出させたからか、つい妹の名を口走ってしまう。 「ふむ、ユゥの妹か……会いたい?」 「えっ?」 メイリンがあまりにこともなげに言うので、ちょっと思わぬ話の展開に驚く。 「会えるの?」 それよりもまず、生きているのかどうか知りたい。でも、抵抗すれば容赦なく斬る、と言ったメイリンの 父親の声がよぎる。もし無事じゃないのだったら……知りたくない。 「会いたいなら、そのうち会わせてあげる。その……すぐにというわけではないけど、そのうちに。」 「生きて……いるの? 確かに? 妹と、それから…母さん、も?」 「生きているか、って? 勿論生きている。ウォン家の奥方と、娘のことなら、元気にして居られる。 首長家の者であるし、それなりの扱いをされている。」 知らないとは思わなかった、とメイリンは言う。僕がかなりの日数、あちらに留まっていたので、 その間のことくらいはとうに知っていると思っていたのだと。 何も聞かないのも、落ち着くまであちらにいたからだと思っていたのだと。 そしてメイリンは僕の母と妹に関しては、それなりに気に掛けて、報告を受け取っていたらしい。 僕が、メイリンの従者になってからは。 だから二人は、確かに元気だと彼女は言う。 「今、ユゥの一族は、地元の蒲州を転々として、河堰の補強の労役に駆り出されておる。 労役には食料が支払われる。衣服その他の物資も。だからそう気を揉むほどのこともあるまい。」 「でも、反抗すれば、容赦なく斬るって…」 「ちょっとした脅しだ。貴重な労働力を、そう簡単に斬る筈がないであろ? ユゥの一族も、最初の労役以降は大人しく従っているようだし、もうそんな脅しの必要も無かろう。」 「最初の労役ってなに?! 何かひどい目にあわせたの?!」 僕が思わず声を荒げるとメイリンはちょっと驚いたような目でぼくを見た。 「あ…ごめん。大きな声出して。」 「よい。許す。……そうか、そこから知らぬのか。案ずるようなことではない。もっと早くに聞けば 良かったのに。」 僕はなんと言っていいか分からなくて、聞けなかった、とだけ言った。 「そうか。わたしがもっと、察してやらねばならなかったのかの? ユゥが、自分の家族を案じないはずがないのにな。 わたしも知らぬこと、機密のことは言えぬが、母や妹のことくらい、気軽に聞いてくれればよい。 そのうち、おまえの妹にも会わせてやる。これと同じとは言わぬが、同じくらい美味しい菓子を、 妹にも食べさせてやろう。それでいい? ユゥ。」 「……有難うございます。」 僕は跪き、主としてのメイリンに臣下の礼を取ろうとした。そうするのがいい気がした。 奴隷の身分に堕とされたとは言え、メイリンのような立派な主人を持てて幸せだ。 「ちょっと待って、ユゥ。」 メイリンは手を地に付けようとする僕を押し留めた。 「礼を述べるのならば、もっとわたし好みにしてくれても良かろう? ちゃんと立って、わたしの目を見て、わたしの名を、呼んで。」 メイリンは僕の手を取って立たせた。くるりと大きな瞳で、僕を見据える。 困る。どうしたらいいんだろう。 メイリンはどれだけ時間が経っても、要求どおりにするまで僕を許す気はないようだった。黙っている 僕を期待に満ちた目で見詰めている。 僕は漸く、躊躇いがちに彼女の名を呼ぶ。 「……有難う、メイリン。」 するとメイリンはふんわりと、お菓子よりも甘く蕩けるような笑みを浮かべた。 ああ。 僕が家族のことも、一族のこともなかなか言い出せなかったのは、本当はこれを恐れていたんじゃ ないだろうか。 無視される方が、まだいい。冷たく突き放されるのも、人間以下に扱われるのも、既に覚悟していたことだ。 でも、こんな風に、優しく受け止められて、いい扱いをしてもらって、気遣ってもらったりしたら、 もうどうやって、好きにならずにいられるのか分からない。 でもメイリンはこの巨大な中華の国の、皇帝の血に連なるお姫様。僕はただ、彼女に拾われただけの奴隷だ。 いずれ、ふさわしい家格の男に……、そう、僕でない男のものになる。 そのときのことを考えると、心が壊れそうだ。 少なくとも今みたいな関係でいることは出来ないはずだ。僕が夫なら決して許すはずもないし、下僕と しても……その、嫌だ。 どこか別の邸に移されるのか、メイリンが嫁いでいった後もこの邸に残されるのか、それとも単なる 護衛や従者として、他の男の妻になったメイリンを傍で守ることになるのか。 ここで生き抜く上で、メイリンは最大の脅威だ。可愛い顔をした暴力そのものだ。 今だって、彼女のことを考えるだけで、心臓が軋んで悲鳴を上げる。なのに、ずっと考えていたいだなんて。 いつかあっけなく棄てられるとしても、それでもなにかを捧げたくて仕方がないなんて、僕自身もどっか おかしい。メイリンの毒にやられてしまっている。甘くて美味しい、仙界から来たような毒に。 ああ、還りたい。あの懐かしい故郷の山に。僕達の神様のいる森に。 そうすれば、どこか狂ったような僕の心も元に戻る。きっと戻る。 だから、いつか必ず還るんだ。 ──続く── 注:吝嗇家=けち、胥吏=試験なしで現地採用される下っ端事務官 で読んでください。
https://w.atwiki.jp/princess-ss/pages/199.html
薄明かりの中に、淡く浮かび上がる寝顔を見詰めていた。 僕の隣で規則正しい寝息を立てる可愛い女の子、メイリン。 ──このまま、朝が来なければいいのに。 何度そう思ったか分からない。 このまま、何もかもを眠らせた、静かな時がいつまでも続けばいいのに。 メイリンが僕の隣にいて、僕だけがメイリンの隣にいて。 囲われた狭い世界の中で、二人だけで生きられたらいいのに。 メイリンの艶のある黒髪をそっと撫でる。絹糸よりも滑らかな髪が、うねるように緩く 編まれていて、その流れにそっと指を沿わせるように撫でる。彼女を起こしたりしないように。 メイリンが、好きだ。 一度自覚してしまえば、その感情はひどく僕の内側を焦がした。 僕らの『クニ』を滅ぼした国の偉い人の娘で、すっごいお姫様で、僕とは生まれも育ちも まるっきり違う女の子。 でも、優しくしてくれた。 僕の失った故郷の話を、興味深げに聞いてくれた。とても楽しそうに、目をきらきらさせて。 僕の一族のことも、僕の家族のことさえ、気遣っていてくれた。 そして、たくさんのことを教えてくれた。この巨大な国のこと、その周りの国のこと、学問の こと、交易のこと、武芸のこと、そして、花のこと。 あのひとときを、楽しい──と思ってしまうのは、罪なことだろうか? 僕が話して、メイリンが話して、メイリンが笑って。 いつまでも、いつまでも、そうしていたいと願ってしまう──それは、罪だろうか。故郷の神々と、 同郷の人々に対する。 それでも、知らぬ間に夜は更けて。 その闇の先に、必ず、新しい朝は来てしまうのだった。 * * * 「──メイリンの、護衛?」 「そうだ、おまえもそろそろ、もう少し役立つ仕事をしろ。護衛は二人一組で付くからな。一人が 役立たずでも、何とかなる。」 僕がその話を聞いたのは、夕刻の稽古の時だった。冬も大分深まっていて、日が暮れると、身体を 激しく動かしていてもかなり寒い。それでもユイウ様は帰ってきてからの稽古を欠かしたりはしなかった。 庭に明かりを点して、身を切るような寒さの中、剣を合わせる。どんなに寒くても、相手の動きに 全神経を使い、鋭く飛んでくる一撃を交わしてなんとか防いでいるだけで、終わる頃には全身から 汗が噴き出している。特にユイウ様の剣は鋭くて重くて、守りから攻めに入る動きが滑らかで隙が なく、一瞬たりとも気の抜けない相手だった。 全身の関節が笑い、喉がひりひりするほどに息を乱している僕とは違って、歩けるようになると同時に 体術を仕込まれ、物心が付くと同時に剣を取ったというユイウ様は、少し汗をかくだけでほとんど 息を乱さない。 刑部でも師範格と対等にやりあう位の腕だと言う話も──勿論メイリンから聞いたのだが──頷ける。 そして最後には次の日の日中にやっておくべき『宿題』、つまり基礎鍛錬が課されて終わる。 メイリンの護衛を務めるという任務も、その『宿題』の一つとして課された。 この邸の護衛を務める人達にも、たまに鍛錬をみて貰ったりしてそれなりに馴染んでいる。そのうち 一人と組んで、明後日の帰りから輪番でメイリンの護衛を務めるという話だ。 「まあ、なにかあっても身を盾にするくらいしか出来ないだろうけどな。むしろメイリンのために、 その身を犠牲にして死ね。」 言うこともやることもキツくて容赦のない人だけれど、ユイウ様には──もう一人の兄、スゥフォン様 にも、僕の能力も、努力も、可能性も、冷徹に観察されているのを感じる。そのユイウ様が、二人の護衛の うちの補佐役とはいえ、大切な妹であるメイリンの護衛を任せてくれるのは、なんだか認められたみたいで 誇らしかった。 だからその日は単純に喜んで、期待と不安の入り混じった気持ちで胸を膨らませていた。新たな任務が、 僕とメイリンの関係を決定的に壊してしまうなんて、思いもせずに。 * * * この邸において、『信用される』ということは、意外と重い意味を持っていた。長くここで暮らすほど、 ひしひしとそれを感じる。 この邸の主は皇族であり、奥方自身も政府の高官であるため、入ってくる使用人の身元は非常に厳しく 審査される。逆恨みしたり、何かに利用しようとして強引な手段に出る輩が少なくないらしいのだ。 僕の『クニ』はシン国と戦を交えた小国であり、その点では『信用できない』に限りなく近いわけだが、 その上でメイリンの護衛を任されるというのは、僕がこの邸に入ってからの努力の積み重ねの結果だと、 僕と組んで護衛にあたる古参の護衛士は褒めてくれた。 彼はこの邸に入ってから長く、メイリンのことも小さいときから護っているのだという。 彼に限らず、この邸の使用人たちは皆、誇りを持ってこの邸に仕えていた。かなりの忠誠心を要求される 代わりに、他の貴族の邸に比べて、きめ細かく厚待遇らしいのだ。 僕も、それは感じる。いつもいい扱いを受けているし──メイリンの兄上達の悪口雑言は別として── メイリンは僕を馬鹿にした態度なんて取ったことはなかった。特に、たまにメイリンの房室で夕食を 一緒に摂ることがあったりすると、メイリンはやたらと僕にいっぱい食べさせようとする。僕らの 『クニ』が長い間飢饉にさいなまれていたせいで、僕はシン国の同年代の青年達と比べても小柄なのだそうだ。 「ユゥはまだ、これから大きくなる。」 そういってメイリンは、自分の分のおかずからもひょいひょいと僕の皿に移してくる。 もちろん、主人格であるメイリンと僕とでは皿に乗っている内容も質も量も初めから差があるのだが。 「有難う。……だけどまさか、自分の嫌いなものを僕にくれてるんじゃないよね?」 そう訊くとメイリンは真っ赤になって反論する。 「ばかな。私は好き嫌いなどせぬ。現に、いま与えているものも、どちらかと言うと好物ばかりだ。」 確かに……というか、ここで出されるものは、どれもこれも美味しいと思う。使用人の食事にさえ、 毎日のように肉か魚の主菜が付き、随分豪華だ。 「じゃあ、姫様が食べればいいのに。姫様だって、成長期なんだし。」 「むぅ……。女子(おなご)はなにかと、大変なのだ。迂闊に好物ばかり食してしまうと、変なとこに贅肉が…」 「別に、ついてないと思うけど。」 僕はメイリンを見た。ほっそりとした顔つき、肩も首も細くて余分な肉などどこにも見当たらない。 「だから苦労しておるのだっ!! 太ったら、すぐに見られてしまうではないか!! ……おまえに。」 「細いし、もっとふっくらしてもいいくらいだと思うけど。」 メイリンは両手のひらをぺとり、と自分の胸にあてて横目でちらと僕を見た。 「……ユゥはもしかして、『ほーまんな美女』とかが好きなのか?」 「『ほーまん』? ああ、豊満? 太ってるってこと?」 「人によっては、ああいうのが『色香がある』とか言うらしいが。」 僕はぴんと来なかった。僕らの一族にはあんまり太った人はいなかったし、こちらに来てからも、 市場を見るための『宿題』として買出しを手伝ったりはしているけど、外でもこの邸でも、メイリンより 綺麗な女の人には会ったことがない。 「それとも実は、ユゥには郷里(さと)の方で密かに言い交わした娘でも、おったかの? 許嫁は、 居なかったと聞いておるが。」 「いないけど、なんで?」 確かに僕の周りにも、親に許嫁を決めてもらう前に自力で約束を取り付けてくるような奴も居るには居た。 でも僕は、それほど器用ではない。 「…なんだかわたしに、つれないではないか。ユゥは、どういう女が好みなのだ?」 「どういう、って……」 容姿は、メイリンほど綺麗な娘は居ないと思う。胸だって、メイリンくらいあれば充分だと思うし、 体型だって凄く綺麗だ。何よりメイリンには緊張感を持って鍛えている人特有のしなやかさがあると 思うんだ。勿論いまのメイリンよりもっと肉付きが良くなってもぜんぜん構わないし、遠慮せず もっと食べていいと思う。 メイリンがメイリンがメイリンがメイリンが。 好み、と訊かれてメイリンのことしか思い浮かばない自分に戸惑う。昔はもっと色々…でも、昔のこと なんて、もう思い出せない。 『ご主人様に対するお世辞』として、ここでメイリンを褒めておくのが普通だと思うけれど、何しろ本当に 本気でメイリンのことしか考えられないので、恥ずかしくて何も言えなくなる。ここでさらっとメイリンを 褒めていい気持ちにさせられるくらい器用なら、それこそ自力で許嫁くらい見つけてこれたかもしれないのだ。 「別に、僕の好みなんて、どうでもいいでしょう……。」 そう言うのがやっとだった。 「じゃあ姫様は、どういう女の人が美人だと思うの。」 憮然として拗ねるメイリンに、逆に質問してみると、途端に胸を張って得意そうに応える。 「ふむ。それは当然、母上様だな。わたしにとって、都で一番の美姫と言えば、母上様だ。」 これはいい質問だったみたいだ。メイリンは滔々と続ける。 「美しくて聡明でお強くて……自分に厳しく、他人には優しい。そして何より、父上様に愛されておる。 母上様はいつもわたしの理想であり、目標でもある。」 両親のことを話すメイリンはいつも誇らしげで、メイリンがそんなにも褒める『母上様』にも、一度くらいは 会ってみたいと思った。──勿論、一刀両断されるのでなければだけど。 それからメイリンは、『母上様』がいかに美しくて素晴らしいかを語り、僕の目論見どおり、さっきの話題は どこかへ行ってしまった。 * * * 夕刻になってから、メイリンがいつも通る道を辿り、古参の護衛士と共に初めてメイリンを迎えに出る。 この時間に外に出たことはなかったが、大通りはいろんな人でごった返していた。沢山の人、多様な装い、 西や東の遠方から来た様々な荷物。王都であるこの街が、いかに大きく豊かであるか、いかに遠方からの 商人を集める吸引力があるかを物語る。 雑踏の中で、僕はもう一人の護衛士に尋ねた。 「こんなに人が居て、護衛には差し障りないんですか?」 人が居た方がかえって安全なこともある、と低い声で彼は言った。 メイリンの通う『学院』を見るのも初めてだった。そこは堅牢な壁で囲まれた広い建物で、入り口は全て 自前の護衛士が詰めており、ちょっとした宮殿にも見えた。 通行証を見せて中に入ると、よく手入れされた庭園の中に回廊で結ばれた広い建物が続いており、そこに 通う学院生らしき人たちがゆったりとあちこちで迎えを待っていた。 そこでのメイリンを見た気持ちを、どう言えばいいだろう。 きちんと正装したメイリンは、邸でも見ていたけれど、やっぱり外の壮麗な建物の前で見ると、より 映えて見えた。 彼女は建物を取り囲む回廊の階(きざはし)に腰掛けて、楽しそうに笑っていた。 僕の、知らない男と、一緒に。 ──『あいつはいずれふさわしい家格の男の元に嫁ぐのだから。』── ユイウ様にそう言われても、僕はそのときまで何も分かっていなかった。 メイリンに、ふさわしい男。高い教養と、上品な物腰、優雅な振る舞い。僕とは生まれる前から圧倒的に 差のついている、この中華の国の連綿たる伝統と文化を受け継いだ男。その体に流れるのは、この国を 支配する、貴族の血。 メイリンの隣に居たのは、正にそういう男だった。見るからに上質な衣を纏って、二人の周りの空気さえも 違って見える。 それに比べて、僕が着ているのは奴僕の青衣で。彼我のあまりの違いに声も出ない。 そして感じたのは──目の前が真っ赤に染まるような──嫉妬心。 嫉妬というのは、僕ら桂花の民にとって、忌むべき感情だった。 森の恵みは万人に与えられ、多く取りすぎた者は少ない者に分け与える。体の丈夫な者は、弱い者を 助けてやる。壮健な者は、老いた者を助ける。その助け合いの中で、妬みや嫉みなどの感情は邪魔に なるだけだ。 病になる者が健康な者を羨んでもどうなるものでもなく、皆それぞれの天命を受け入れて謙虚に生きた。 シン国に来てからも、僕は自分の出自や境遇を恥じたことはなかった。 僕はいろいろなものを失ったけれど、一番大事な故郷の人達すら裏切ったけれど、それもまた、僕に 与えられた天命で、逆らっても仕方ない。与えられたものの中で精一杯に努力してこそ、道は拓ける。 なのに、そのとき僕が感じた感情は、紛れもなく嫉妬だった。羨ましい、妬ましい、あれが欲しい。 彼にあり、僕にないものが。 財力が。家柄が。その血が。メイリンの横に居るために必要な、すべての要素が。 そのとき分かった。僕は今まで、心に蓋をして生きてきたのだ。暗い欲望も、人の持ち物を妬む心も、 こんなにも僕の心の中に──噴き出すほどに、あるじゃないか。 メイリンは、僕の姿を見つけるとぱっと明るい顔になり、手を振った。 でも僕は、いまの顔を見られたくなかった。 身の丈に合わぬ、過ぎた欲望、自らの境遇を僻む気持ち、そして何より、他人の持ち物を妬む心。 黒々とした心を抱える僕はいま、どんな顔をしているのだろうか。 「ユゥっ! 今日の帰りから、ユゥの番なんだね。一緒に帰ろっ!!」 「……当然です。一緒に帰るために、迎えに来たんですから。」 僕は少し俯いて、メイリンの方を直視しないようにしながらぼそぼそと答えた。それでもメイリンは 明るく上機嫌そうに振舞う。その明るさも、いまは少し突き刺さるようだった。 「ねえユゥ、手、つないで。」 「駄目です、なるべく手は開けておかないと。」 僕は下っ端としてメイリンの荷物を持ってあげる。そして教えられたとおりに答える。 メイリンはぷっとふくれた。 「けち。せっかくの初日なのに。」 「姫様、彼は任務中です。あまり煩わされませぬよう。」 もう一人の護衛士がやんわりと嗜める。彼は随分と古参で、メイリンも言うことを訊かざるを 得ないようだ。 「つまんないのっ。」 メイリンはそう言い放つと、ぽてぽてと僕の前を歩き始めた。僕のほうを見ないでくれるのは、 いまだけは助かる。 いろんなことを考えすぎて、頭がずきずきするほどだ。 綺麗な、綺麗なメイリン。 いまの僕には、メイリンを視界に入れることすらおこがましい気がする。そして、メイリンを見る ほどに、心が暗く澱んでいくのが判る。 こんな感情、知りたくもなかった。 * * * 邸へ帰ってすぐに、「頭痛と吐き気がする、伝染(うつ)してしまってはいけない」と称して使用人部屋の 僕に与えられた寝台に入ってうずくまった。この邸に連れてこられてからいままで、調子を崩したことは なかったけど、むしろその所為で皆あっさりと信じてくれた。 頭は本当にずきずきと痛んだ。目をつぶると、脳裏に次々と光景が浮かんだ。 花に囲まれた、知らない邸に立つメイリン。そのそばには、知らない男が立っている。多分、今日学院で 見た男に似ている。微笑むメイリン。男もきっと笑って…… そして、抱き合う。 メイリンがいつか彼女に見合う貴族の家に嫁ぐとしても、それは彼女にとっては嫌々従わねばならない 義務のようなもので、僕と一緒に居るときのような輝く笑顔は見せないのだろうと、なぜか勝手に思っていた。 でもきっと──ユイウ様の言うとおり──メイリンは誰にだって優しい。 メイリンに笑いかけられて、優しくされたら、どんな男だって一発で恋に落ちてしまうだろう。 メイリンは幸せになる。きっとどんなところに行っても、幸せになれる女の子だと思う。 僕が、そこにいなくても。 怒りなのか憤りなのか哀しみなのか悔しさなのかわからない感情が、体の中で息も出来ないくらい暴れていた。 僕は訳のわからない気持ちに突き動かされてしまわないよう。左手の爪を右手の甲に、血が滲むほどに 食い込ませて、じっと耐えていた。 こんな風に考えるのはおかしいと、理性では分かっていた。 僕はただ、メイリンに拾われた奴隷なのに。 自分が何か、メイリンに対して権利を持っているように感じてしまうなんて。 本来なら、嫉妬する権利も、怒る権利もありはしない。 それでも、奴隷の身でも、哀しいほどに、心は自由なのだった。 自由に欲望を持ち、願望を持ち、将来が拓けることを夢見る。一方で、怒り、妬み、憤り、嫉妬する。 僕は自分の感情を息苦しく持て余しながら、むしろこの息苦しさのままにこの命が尽きてしまえばいいのに、 とさえ思っていた。 メイリンを、あの綺麗な身体を、こぼれるような笑みを、夜毎に抱き合ったあのあたたかさを──永遠に 失うとしたら、そのあとどうやって生きていったらいいのかわからない。 僕を支え続けた故郷への道のりのこともそのときは頭の中から消えうせて、ただメイリンのことだけで 一杯になってしまっている。 そして──夢うつつに狭い寝台に転がるうちに、何度も血濡れになった自分の姿を瞼の裏に見た。 足元には血だまりと、倒れている男。上質で仕立ての良い服を纏った、貴族の男。 更にもう一人、さらりとした絹の襦裙、複雑に編み上げられた髪、細い体。その身体が、力なく血だまりに 倒れている。 ────メイリンだ。 そのたびに、声にならない悲鳴を上げて目を開く。 決してそんなことはしたくないはずなのに、手の届かないメイリンを永遠に自分のものにしたいと願った なら……いつか、そうするのかもしれない。あの、いつもくるくると表情を変える、生命力に溢れた女の子を、 僕のこの手で。 でも、そんなことは間違ってる。そんなことでは手に入らない。 だけど、他の誰にも渡さないことは出来る。 相反する感情に引き裂かれながら、何度目かに冷たい汗をかいて飛び起きたとき、すっかり夜は更けていた。 いつもなら、メイリンと二人で居る時間だ。 メイリンに会いたい。 今すぐ会いたい。おかしなことを考えてしまうのも、メイリンがいないせいだ。今日はほんのちょっとしか、 メイリンを見ていない。 我知らず、使用人部屋を飛び出し、駆け出していた。 廊下を歩く使用人達も、控えている衛士達も、僕がメイリンの房室へ向かうのを特に咎め立てする気配は なかった。 メイリンでさえ、そうだった。 僕が扉の前で訪問を告げると、弾んだ声で自ら扉を開けてくれた。 「ユゥっ?! もういいの? お見舞いに行ったけど、伝染ったらいけないって、入れてもらえなかったの。」 メイリンはいつだって優しい。それに可愛くて、扇情的でさえある。まだ水気を含んだ髪がしっとりと つややかで、夜の薄明かりの中でメイリンに匂いたつような色気を添えている。 その姿を視界に捉えただけで、僕を支配していた息苦しさがすっと引いて行くのが分かる。 メイリンが、好きだ。心から。 だからこそ、物言わぬ従者として、心のない奴隷として、傍にいるのはもう限界だ。 僕は手を伸ばしてメイリンの首に触れた。 なんて細さなんだろう。鍛えがたい、人の急所の一つ。 脈部を正しく締めれば、数秒で昏倒する。気道を塞げば、死に至る。 なのにメイリンは、少し人を信用しすぎだと思うんだ。僕の指がその首の細さを測るように喉元にさえ 伸びているのに、彼女は不思議そうな目で僕を見ているだけ。 とくり、とくり、と僕の指に規則的な脈動が伝わる。メイリンの命の音だ。 そして僕は少し安心する。 まだ僕は、これを止めたいとは思わない。いまは、まだ。いつまでも感じていたいとさえ思う。 でも、それは叶わない。 だから、メイリンと一緒に居るのは、もう終わりにするべきだ。 すとんと、心が定まった。後から思うと、なぜそのときに、それが唯一の正解だと思ったのか、上手く 説明できない。 ただ、そういう欲望はずっと僕の心の奥に隠れていて、その行為は確かに僕の願望だった、と思う。 初めの夜に、斬首に値すると書面で宣言されたその行為。 「君のことが嫌いだ、メイリン。」 僕が嫌いなのは、僕だ。だから君も、僕を嫌いになってしまえばいい。 彼女は少し息を詰めるようにして、僕の目を見る。 「身分と権力があれば、なんでも思い通りになると思っているの? 人の心でさえも。 僕は、もう君の遊びに付き合うのはうんざりだ。」 言ってから、気付く。僕がどれだけ自ら従っていたのかを。 随分戸惑ったし、振り回されることもあったけど、いつだってメイリンは良い主人で、僕はメイリンの 傍で彼女に従って、幸せだった。 「大っ嫌いだ。」 ひどい言葉を吐くのは、簡単だ。簡単すぎて笑いそうになるくらい。 思っているのと、反対を言えばいい。 「初めからずっと、そう思っていた。僕たちの『クニ』を滅ぼした側の人間のくせに。」 そうか、僕は初めからメイリンが好きだったんだ。ずっと、好きだったんだ。 そして、いまも大好きだ。 僕はじり、とメイリンに詰め寄った。メイリンは哀しげに眉を寄せ、いまにも泣きそうだ。 「優しげな猫なで声を出して、僕らの誇りさえ、根こそぎ奪うつもりか。」 誇りを、差し出したのは僕のほうだ。そしていつの間にか、故郷へ帰ることよりもメイリンと 一緒にいることのほうが心の中で大きくなっていた。 「だからこれは────罰。」 震えるメイリンを抱きかかえるようにして寝台へと運び、なるべく乱暴に放り出すと、その上にのしかかり、 組み伏せた。 「ユゥ? 何を……」 「高貴なお姫様には、いい罰になるだろうね。……下賎の血を、孕むがいい」 必ず僕は罰を受けるだろう。娘を溺愛するという父親が、こんなことをする僕を許すとは思わない。 だけど、ただ、メイリンに僕の傷痕を残したかったのかもしれない。 はじめてを捧げあって、肌を触れ合って、未熟な性への好奇心を共有した。 その大切な時間が、メイリンの従うべき貴族のしきたりの前に塵芥になるのなら、もっと強く、もっと深く、 僕のことを刻みたかった。 そして、誰かに裁かれるなら、メイリンに裁いて欲しかった。 「や…っ、痛い……! こわいよ、ユゥ……!!」 細い腕、華奢で柔らかなメイリンの身体。 男の身体は、こんな風にも女の身体を傷つけてしまえる。 あのメイリンと会った最初の夜、彼女の安全のために、僕に手枷は正しく必要だった。 僕は『クニ』を失った哀れな子供で、メイリンは僕の『クニ』を滅ぼした国のお姫様で。 それでも、時間を遡れたとしても、このちょっと危なっかしくて魅力的なお姫様に、僕はどうしようもなく 心を奪われてしまうのだろう。 「やめ……っ、んん…っ!!」 声を上げれば、すぐに誰かが飛んできて、外側からでも、閂がかかっていても扉をこじ開けるだろう。 僕はほどいた夜着の帯を丸めてメイリンの口に捻じ込んだ。鈴を鳴らすような素敵な声が、くぐもった 悲鳴に変わる。自力で口の異物を外せないよう、両手も拘束して天蓋の柱に括りつけた。 僕の目の前で自由を奪われ、しどけない姿を晒すメイリンは、ひどく魅惑的だった。 このまま無理矢理にでも、どこか遠くへ攫ってしまったら、どうなるだろう? メイリンだけの力では出られないような深い森に入って、誰にも知られず、ふたりきりで。 獣を狩り、鳥を射て、森の恵みを受けてふたりで暮らす── 僕はかぶりを振った。僕がこの王都に来ても、故郷をどれだけ大切に思っていたかを考えれば、 メイリンの家族も、育った家も、メイリンが従わねばならない規範でさえも、メイリンを育んだ全てから 切り離してしまうのがどんなに酷いことか分かる。 だから、許して。最後に一度だけ傷つけてしまうことを。 いいや、許さないで、憎んで。一生憎み続けて。 初めから居なかったように、忘れ去られるよりずっといい。 忘れないで、僕を。 そして、君の手で裁いて。 僕は出来るだけ感情を殺してメイリンを乱暴に、酷薄に扱った。メイリンが心置きなく僕を憎めるように。 僕はそのとき確かにメイリンを抱いたけれど、いつものように彼女を気持ちよくしてあげる甘い時間では なかった。 それは、暴力だった。 誰かが異常に気付く前に終えなければならなくて、あまり時間はなくて。 怯えたメイリンはいつものようには濡れず、充分に準備が整わないまま繋がらなければならなかった。 「んっ、んんっ!!」 拘束されたまま僕に貫かれる瞬間、メイリンは身体を捩ってくぐもった悲鳴を上げる。その声にすら、 ゾクゾクとした 仄暗い悦びを感じていた。 僕を痛みと怒りと、嫌悪と憎しみと共に心に刻んでくれればいい。 そしてその憎しみを、ずっと忘れずにいてくれたらいい。 あまり濡れていないメイリンのなかはひどく擦れて、僕も長くは続けられなかった。 ──これが、最後なのに。 そう思っても、いずれ終わりのときは来る。僕は湧き上がってきた快感をとうとう押さえきれなくなり、 初めてメイリンの内部に放った。 初めての体内への射精は、ことのほか大きな快感を生んだ。精を放っている間にも、内部の肉襞が波打つ ように動き、残滓までを吸い尽くすようだった。最後まで受け入れさせた、という実感が、体のすみずみまで 染み渡った。 それは、ひとりよがりの快感だったかもしれないけど。 生涯で最後になるかもしれない余韻をゆっくりと味わってから、メイリンの手首を縛った帯をほどいて あげる。手が自由になると、メイリンは口に詰められていた帯を自分で取った。 メイリンは、ひどく泣いていた。 メイリンに痛みを与えること、憎まれることを望んでいたはずなのに、その涙は僕の深いところを 突き動かしそうになる。いますぐに彼女の足元にひれ伏して謝り、手を尽くしてその痛みを和らげて あげたかった。 でも、もうそんなことは出来ないし、許されない。 メイリンを、暴力で陵辱した。泣いているのにも構わず、苦痛を与えた。 あとは、その報いを受けるだけだ。 「ユゥの、ばかっ……。」 メイリンは流れる涙を拭いもせず、夜着の襟をきつく合わせた。 「わたしはまだ妊娠など、許されておらぬのに。たとえ孕んだとしても、堕ろすことになってしまうのに。」 メイリンはその辺に掛けてあった上着を掴むと、ぱたぱたと足音を残して走り去った。 おそらく、だれかしら呼んでくるつもりなのだろう。 「堕胎、か。そうだよな……。」 これで全て失うのだ。と僕は思った。 無理矢理陵辱したのも、斬首と引き換えにしてでも、彼女の中に自分のかけらを残したかった、という 気持ちがあったんだろう。 僕が死んでしまうとしても、メイリンの元に──或いは他のどこかで養育されるとしても──僕の一部が 残り続けるとしたら、死んでも悔いはないと思った。 でも、そんな風に上手くいくはずもない。 僕は故郷で裏切り者になり、心の中ですら、故郷を捨ててメイリンで一杯にしてしまった。 そして幼い恋情と破局の予感に耐え切れず、自らそれを壊した。 運良く子供を孕んでいても、堕胎で無に帰される。 あとに残るのは、痛みの記憶と憎しみだけ。 それでも、いつかこの手でメイリン自身を壊してしまうより、僕が全てを失う方が、ずっといい。 「寒い…な。」 僕は膝を抱えて、寝台の端に寄りかかり『誰か』が来るのを待った。 王都の冬は、桂花山よりは幾分かましだが、それでも厳しい。 居室の中でさえ、朝方には手洗い桶の水が凍りつくほどだ。 布団にくるまっていたような薄着で、既に火の気の絶えた房室で、長い間じっとしているのは命取りだと いうことも知っていた。でも動く気にはなれなかった。 「忘れられた、かな……。」 『誰か』はなかなか来なかった。忘れられることが一番恐かった。何もかも失って、更に忘れ去られること。 行為のあとの熱を失って急速に冷えてゆく手足は、僕の心のようだった。絶望に凍てついて、冷たくなってゆく。 もう何もかも、終わりにしたい。 そう、呼吸をすることさえも。 怖くはなかった。 死ねば、桂花の民は誰もが、山に還る──僕らはそう信じていた。 山の神々は、許す神だ。どんな罪人も、穢れも、その深い懐に取り込んで浄化してくれる。 僕も、少し遠回りしたけれど、魂だけになれば、山の神はきっと許して、受け入れてくれるだろう。 ただ、生まれる前の場所に、還るだけだ。 すぐに、眠気がやってきた。山育ちの僕は、その眠気が危険であることは分かっていた。 薄れる意識の中で、ぼんやりと、もしメイリンと僕の立場が逆だったら良かったのになあ、などと考えていた。 僕らの『クニ』は負けてなくて、戦に参加したメイリンは、僕の小隊に捕らえられてしまうとか。 そうしたら、誰にも触らせず、誰にも見せずに、僕だけのものにしてしまうのに。 僕の手に入るものなら、何でもあげる。笑顔を見せてくれるまで、うんと優しくしてあげるんだ。 そして僕の子を産ませて、妻にする。メイリンの産む子どもは、どんなにか可愛いだろう── そんなことは、ありえないけど。 僕は静かな気持ちで、目を閉じた。 意識は、じきに心地良い闇に取り込まれた。 ────続く────
https://w.atwiki.jp/princess-ss/pages/200.html
目が覚めて初めに見たのは、見慣れぬ天井だった。 喉がからからに渇いていて、頭がぼうっとする。節々の痛む体を動かして周りを見廻すと、埃の積もった箱、 掃除道具、梯子やそのほかのよく分からない道具類が棚に置かれていた。多分、物置部屋だ。 開いた場所に俄か作りの寝台が設えてあって、そこに寝かされている。 どうして、こんなところに寝ているんだっけ? 考えようとしても、頭が朦朧として考えが上手く纏まらない。 水だ、とにかく、水。 ひどく喉が渇いていて、水が欲しいのに、体が重くて動くこともままならない。 漸く体を起こしたと思ったら、眩暈がして、大きな音を立てて床に倒れこんでしまった。 それでやっと気がついたけど、どうやら熱があるみたいだ。床の高さから見上げる天井が、ゆっくりと 回転して見える。 仕方なく寝台に戻ってから暫くして、大きな足音がしたかと思うと、扉がギッ、と開いて、怒った顔の 鄭(チョウ)おばさんが現れた。 この邸の女中頭で、勿論この邸には長く仕えていて、僕もこまごまと、よくお世話になっている。 おばさんは入るなり、手に持っていた手桶で僕の頭をがつんと殴った。 「ぐっ……」 おばさんの一撃は、頭痛のする僕にはありえないほど響いた。そして、その言葉も。 「このっ!! 悪餓鬼がっっ!! 姫様に、何をした?!」 そうだ、メイリン。 僕はもうメイリンに、憎まれ、嫌われているはずだ。 そのことを思い出して、おばさんに殴られたときよりももっと鋭い痛みが胸に広がる。 ぜいぜいと息をするばかりで声の出せない僕に、おばさんがなみなみと水の入った茶碗を差し出す。 水差しは、何のことはない、物置棚の一角にそっと置かれていた。 それを一気に飲み干してから、居住まいを正して覚悟を決めて答える。 「すべて、姫様の仰った通りです。」 僕はここに、監禁されているのだろうか。斬首までの短い間。 そう思いながら室内を見廻していると、ふいに脳天におばさんの二撃目を喰らってしまった。痛みに 声も出ない。 「姫様が何も仰らなかったから、訊いてるんだよ!! 正直に答えな!!」 おばさんは怒りに震えながら僕を睨みつけた。 「姫様が夜中にあたしの寝床にもぐり込んで来なさるときはね、何かひどくお辛いことがあったときとか、 恐い目に遭いなさったときなんだよ!! それなのに、姫様は今回に限って、なんでもないと仰る。ところが朝になったらあんたが姫様の寝室で 倒れてるし、姫様の様子からも、あんたが姫様に何かしたってことは、明白なんだ。さあ吐きな!! どんな狼藉を働いたんだい?!」 おばさんの剣幕とは裏腹に、僕はまだ熱と痛みでぼうっとしていた。 ──庇われた、のだろうか? 僕を罰する気なら、凄く簡単だったはずだ、ただ誰かを呼べばいい。 何故、そうしなかったのだろう? 何故、何も言わなかったのだろう? 出来ることなら、訊いてみたい。 「あの……それで姫様は、いまどこに?」 「今朝、御発ちになった。」 おばさんは苛々しながら僕をねめつけた。 「あんたね……、自分の周りで起こっていたこと、何も憶えてないのかい。何日寝てたのかも。」 そういえば、体がやたらとだるくて、関節が軋む。寝ていたのは一晩だけ、ではないのだろうか。 「三日だよ、三日!! しかもその間、誰が世話してたと思う?!」 「あ……すみません。お世話になりました。」 僕はてっきり、おばさんが世話をしてくれたのだと思い、お礼を言った。 「違──うっ!! 姫様だよ、姫様!!! お前ごときに、直々に!!! 肺炎まで起こしたあんたをあたし達がこんなところに隔離したにもかかわらず、目覚めるまではと、 かいがいしく世話をなさって夜も昼も離れようとはなさらなかった!! そして仰ることは、『早く元気になって欲しい』『目が覚めたらわたしと仲直りして欲しい』と来たもんだ!!」 おばさんは、我慢できなくなった様子でまた僕の脳天に手桶を振り下ろした。が、僕は今度は間一髪で避けた。 メイリンが……僕の看病? しかも、『仲直りして欲しい』? 「避けるとは生意気な……こういうときは、殴られときな!!」 「すみません癖になってて……避けないとまた愚図とかゴミとか言われてユイウ様に罰稽古を食らう ような気がして。」 「安心していい、長公子様も二公子様も旦那様に呼ばれて、とっくに邸を空けていらっしゃる。 姫様だけは、おまえの傍を離れるのを嫌がって出発を延期なさったが、今朝には容態も落ち着いたんで、 御発ちになった。」 「御発ちになった……どこへ?」 「あたし達には、知らされていない。ただ、長旅の用意はしていらした。」 メイリンが……いない? この邸のどこにも? 僕を、置いていった? 何にも言わずに? あんなことがあった上に、意識もなく臥せっていたのだからそれも当然なんだろうけど、僕は突然 何もないところに放り出されたような酷い喪失感を感じた。 「置いていくくらいなら……殺してくれればよかったのに。」 そう呟いた途端、後頭部にもう一度鋭い一撃を食らった。やばい、また不意打ちで食らってしまった。 おばさん侮りがたし。 「いい若いもんが、命を粗末にするようなことを言うんじゃない!! あたしはね、あんたを元気にすることと、姫様に平身低頭詫びを入れさせることを請け負ったんだ。舐めた 口きくと、承知しないからね!!」 「だって」 僕はやっとの思いで反論した。 「あの戦場で拾われたときから、僕の命は姫様のものでしょう? そしてそれも、姫様が他の男と結婚でも すれば、必要なくなる!!」 本来なら、必要とされなくなったときが自由になる好機の筈で、僕はそれを待っていたはずだった。 なのになんで今は、必要とされなくなったときのことを考えるだけでこんなに死にそうな気持ちになるのか。 おばさんはちょっと呆れた、気の抜けたような声であー、と呟いた。 「…姫様はまだ学生だから、結婚は少なく見積もってもあと二年はないだろ?」 「でも婚約だけなら、すぐにでもあるかもしれない……釣り合う家格の男と。」 おばさんはまあねえ、とか、そういうことか、とか、曖昧な相槌を打った。 「あと二年かそこら、誠心誠意お仕えして、そのあとは放免していただくとか。」 「あと二年も優しくされて、そのあといらないものとして棄てられるよりは、今すぐ終わらせたい。」 おばさんは、もう手桶で殴ろうとはしなかった。代わりに、あんたはまだ乙女心も分からない馬鹿な 餓鬼なんだね、と言った。 「そういう風に思ってるって、姫様か旦那様に、ちゃんと言ったかい?」 「メイリ…じゃなかった、姫様に? とんでもない!! 姫様に直接『勘違いするな』なんて言われたら僕、 死んじゃうよ!!」 実際に死ぬわけじゃなくて、心が死にそうに苦しいのに、体はなんともなくてお腹がすいたり眠くなったり、 普通に生きていってしまう、その矛盾がどうしようもなく苦しいのだ。 「言ってみなよ。」 鄭おばさんは、軽い口調で言った。 「おばさんは、僕が姫様に対して邪まな感情を抱くのは、いけないことだと思わないの。 ユイウ様なら、いつもそう言うよ。『勘違いするな』『身分を弁えろ』って。」 「長公子様は、奥様に似て厳格な方だからね。 だけどあたしとしては、あんなに可憐で気立てが良い姫様に何も言わずに、自分だけで抱え込んだ末に 姫様を泣かせて何かを解決した気になる方が、よっぽどいけないことだと思うよ。 あんたは、そんなに人と上手くやっていくのが苦手な子だったかね? あたしを含めてみんな、あんたの ことをもっと心根の真っ直ぐな子だと思ってたけどね。」 「……ごめんなさい。」 僕はなんとなく、桂花の民としての振る舞いを避難された気がして、素直に謝った。 「謝るなら、姫様に謝りな。 それに、この邸で最終的に物事をお決めになるのは、旦那様だ。旦那様は、弱い立場のあたし達を ことさらに苛めたりはなさらない。きっとあんたにも、何かいいようにして下さる。」 敵には容赦がないけどねえ、とおばさんはぼそりと小声で零した。 何かいいようにして下さる、の内容が、他の女を見つけてくれるとかだったら絶対に願い下げなんだけど、 と密かに思う。何をどうしたら好転するというんだろう。 「それに多分、姫様は、今あんたが言ったようなことをお聞かせしたら、喜ばれるだろうね。」 メイリンが喜ぶ── それを聞いた瞬間、メイリンの花のような笑顔を思い出して、心がぽわっと浮き立つ。 「そんなはず、ないよ。」 きっとあれだ、奴隷の忠誠を喜ぶとか、そういう意味だ。本気で好きとか言っても、困らせるだけだ。 ……と必死に否定しても、心がなんだか浮かれていくのを止められない。本当にどうかしてる。 「あんたみたいな若造と、あたしみたいな熟女では、どっちが女心が分かるだろうね?」 自信ありげなおばさんを前にして、僕だって短い期間だけど、この邸に来てからは誰よりも長い時間を 共にしてるんだから! と無駄に張り合いそうになる。 「と、に、か、く!! 体をしっかり直すことと、姫様が帰ってきたら、御満足頂けるまで謝ること! このふたつは、このあたしの年季にかけて、守ってもらうよ!」 鄭おばさんは、この邸での年季は多分一、二を争うくらいなんじゃないだろうか。 僕はこの自称熟女のおばさんにそれ以上逆らっても無駄な気がして、まずは大人しく養生することにした。 * * 僕の肺炎が跡形もなく治る頃になっても、メイリンたちは──ユイウ様、スゥフォン様、それから旦那様も含めて、 なかなか帰ってこなかった。 この邸の主人格の人間は、学院があるからと残された末子のシゥウェン様と、時々帰っているという奥様のみ。 ただし、僕はひきつづき奥様の気配すら感じることはなく、主人の気配の希薄なこの邸は、ひどく静かで 寂しそうにさえ見えた。 シゥウェン様は、時々兄上から言付かったという『宿題』を渡しに来た。彼はいつも無口で、必要最低限 しか口を開こうとはしなかった。 僕が彼とまともに口を利いたのは、彼の大切な姉の話をしたときだけだ。 「……出て行けばいいのに。」 僕と比べても少し背の低い少年は、ぽつりとそう言った。 兄上達と比べて、まだ体つきは随分と華奢で、女の子のようですらあった。 「は?」 「メイリンを、泣かせたそうじゃないか。気に入らないことがあるなら、出て行けばいいのに。 今なら誰も、おまえを止めはしない。出て行って、家族の元にでもどこにでも行けよ。」 彼は吐き捨てるように言った。 ここを出て、桂花の民の元に帰る? この邸を抜け出して? この邸に来たばかりの頃は、想像もつかなかった。だけど今は、地理も分かるし、地図さえ持っている。 関所を通るのは難しいけれど、抜け道があるのも知っている。お金は持っていないけど、その辺で日雇いで 働けばなんとかなるし、出来ないことではなかった。 それでも、僕はかぶりを振る。 「鄭おばさんと、約束したんです、姫様の帰りを待つって。帰ってきたら、ちゃんと謝るって。 勿論姫様が僕に出て行けというなら、そうします。」 彼はキッと僕を睨んだ。 「メイリンの帰りなんて、待つ必要ない。今すぐ出て行けよ、この山ザル。」 一応悪口を混ぜてみていることは分かるが、根が真面目なのか、ユイウ様ほどの迫力も、スゥフォン様の ほどのキレもない。ちょっと上げておいて物凄く落すとか、油断させておいて鋭く切り込むとかの技を 全く使わない悪口は稚拙で、微笑ましくさえあった。 「御本人のいないところでは、『姉上』とは呼ばれないんですね、三公子様。」 呼び方のことを指摘すると、彼はさっと顔を赤らめた。僕も本人の前では名前呼びするかどうかにいつも 気をつけているから何となく分かる。多分彼も、他の兄弟の例に漏れず、あの綺麗で魅力的な姉を、 特別に慕っているのだろう。 「おまえみたいな下賎の者が、メイリンに近づくなっ!! 無礼者!!」 彼にしては珍しく声を張り上げ、強い目で僕を見据えて怒鳴りつけると、次の瞬間にはくるりと踵を返し、 真っ直ぐに背中を伸ばしてつかつかと去っていった。 メイリンの弟としての彼の怒りももっともである。 メイリンはいい主人として僕に優しくしてくれたのに、僕は勝手な理屈をつけて、彼女を傷つけたし、 泣かせた。メイリンが庇ってくれた所為で誰も知らないけれど、きっと彼が僕のしたことを本当に知って いたら、首を刎ねるべき、って言ったんだろうな。 ねえメイリン、どうして僕を庇ったりしたの。 君にとって、僕はなんだった? まだ本当に、僕と仲直りしたい、なんて思ってくれてるの。 僕はここで、君を待つ。もう一度会ったら、約束通り平べったくなるまで謝るよ。 誰に背いたとしても、僕はもう君だけには背かない。 メイリンが僕に出て行けと言ったら……と、そこでさっき自分が言った事を思い出して死にそうな気持ちになる。 うーん、そうしたら……自分の気持ちをとりあえず言ってみよう。出て行きたくないって。 その後もメイリン達はなかなか帰らず、時はゆっくりと過ぎていった。 王都である盛陽は雪深くはなかったが、それでも冬が深まる季節は何度か雪下ろしと雪かきが必要だった。 勿論、いい鍛錬になるとか言って、若い僕は便利にこき使われた。ユイウ様のいない間、僕の稽古の面倒を 見てくれたのは家令であるツァオという男で、邸中の力仕事を経験させてくれてそれはそれで面白かったが、 手合わせのときには、ユイウ様よりはるかに手加減を知らなかった。 ひどく寒い夜には、メイリンがどこかで凍えていないようにと祈った。晴れた暖かい日には、メイリンが ふと帰ってくるような気がして、何度も門の前を見に出てみたりした。 そして、厳冬の季節を越え、ある日、雪の中で庭の梅の木が、ふっくらした小さな蕾をつけているのに気付く。 もうすぐ冬が、終わるのだ。 雪の中で、寒さに耐えて咲く花。 この邸の誰からも愛されている姫君、梅玲[メイリン]と、同じ名を持つ花。 この邸の南向きの庭には、かなり立派な梅林がある。 ──この梅は、結婚なさってすぐの頃、父上が母上の名にちなんで植えさせたのだ。 いつかメイリンが、誇らしげにそう語っていた。 ──美しい林であろ? 父上が、木々の手入れにも心を砕かれておるのだ。 もっとも母上は、恥ずかしがって滅多にここに近寄られたりはせぬのだが。 両親のことを話すメイリンはいつも幸せそうで、くすぐったいくらいだった。 両親にも兄弟にも惜しみなく愛されて、その分周りの人間にもとことん優しく出来る女の子。 誰が、メイリンを好きにならずにいられるだろう。 そう、僕がメイリンを好きで仕方なくたって、ぜんぜんおかしくなんかない。 たとえ、かつては敵同士だったとしても。 ──これだけの梅が一斉に花開くと、なかなか壮観なのだぞ。 今年は一緒に見られるな、ねぇユゥ、きっと一緒に見よう。 そういって零れるように笑うメイリンは、きっとどんな花よりも美しかった。 ねえメイリン、もうすぐ君の名の花が咲く。 いま君はどこで、この空を見ているの。 逢いたい。 君に逢いたい。 痛いほどに、そう思う。 * * その夜、メイリンの夢を見た。 真っ暗な中に雪がしんしんと降る、寒い夜。 雪明りでぼんやりと明るく見える中、ほっそりとした人影が見える。 ああ、メイリンだ。 近づく前からなぜかそう思う。きっちりと編み上げて左右にひと房ずつ細く垂らした編み髪、 優美な細いうなじ。 僕に気がついて、振り返る。──離れてからずっと、待ち望んでいた瞬間だ。 ──……ユゥ…… 鈴を鳴らすような声が、僕の名を呼ぶ。もうそれだけで、胸が一杯になってしまう。 彼女の手を取ると、雪の中でその体はまるで氷の塊のように冷え切っていた。 「メイリン?! どうしたのこんなに冷えて!! 早く邸に入って、火を熾してもらって温まらなきゃ!!」 少しでも温めるように、思わず抱きしめる。 僕の腕の中で、メイリンがぽつりと言った。 ──ユゥは、わたしのこと、嫌いなの? その声があまりに儚げで哀しげで、胸をぎゅっとつかまれたような感じがする。やっぱり、メイリンが 哀しそうなのは嫌だ。絶対嫌だ。 「違うんだ、好き。君が好き。好きでそうしようもなかったんだ。 ごめんね、ごめんね、ごめんね──!!」 もう何をどう謝るんだったか忘れてしまった。謝れといったのは誰だっけ。何を謝れと言ったのだっけ──? 言葉が出てこない代わりにぎゅっと抱きしめて、冷えたその体が、少しでも暖まってほしいと思った。 代わりに僕が、氷のようになっても構わない。 「ふむ。では、許す。」 耳元ではっきりとした、よく通る声がして目が醒める。 えっ? ここは間違いなく、使用人部屋の僕の粗末な寝台だ。そして僕の隣にいるのは。 「め、メイリン?! どうして?! まだこれも夢なの?!」 「いま帰った。あまり大声を出すな。せっかく寝た他の者が起きる。」 そう、ここは大部屋だ。周りの寝台には他の下男が寝ていて、決してメイリンが足を踏み入れるような ところではない。 ……っていうか、何でこんな密着してるの。 「言っておくが、わたしがおまえの寝台に潜りこんだ訳ではないぞ。 おまえを起こしにきたら、おまえの方がわたしを強引に引きこんだのだ。」 そう言って身を起こすメイリンは、横になって僅かに乱れてはいたが、まだきっちりとした正装をしていた。 いつもより華やかな、桜色の豪奢な絹の襦裙。細かく編み上げられて簪で飾られた髪。薄く紅を引いた唇。 一瞬、何もかも忘れて見蕩れてしまう。 「ご、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいっ!!」 状況がさっぱりつかめないのでとりあえず謝っておく。謝りつつも、ちらちらと久しぶりのメイリンを 盗み見ていた。 ああ、メイリンってこんなにも可愛かっただろうか。勿論初めて見たときからとんでもなく綺麗な女の子 だとは思っていたけど、こんなにも…何というか、匂い立つような、光り輝くような、幻惑するような、 可愛さだっただろうか。 「ここは狭いし、わたしも着替えておらぬから、わたしの寝室へゆくぞ。 まったく、おまえが主人の褥を温めておかぬから、わたしがこんなところまで来る羽目になったではないか。」 メイリンは迷わず先に立って、背中をぴんと伸ばしてすたすたと歩く。 僕の方はといえば、ゆくぞ、と言われたからにはついて行っていいのだろうが、少し自信がなくて 離れたところを歩く。 さっき、許す、と言われただろうか? 何をどこまで許す? そんなに簡単に? 逡巡する僕をメイリンが振り返る。 「どうした? 足元がおぼつかないなら、手を引いてあげようか?」 そんなことはない、廊下にはまだ明かりがぽつぽつ灯っているし、ちゃんと歩けます、と答えようと したけれど、差し出された手のひらの魅力には勝てなかった。 ほっそりとしてなめらかな手を握ると、その指先ははっとするほど冷たい。 思わず包み込むようにぎゅっと握ると、向こうもぎゅっと握り返してくる。 それだけでもう幸せな気分が満ちて、他には何もいらないとさえ思う。 好き、好き。君が好き。 言葉にできないこの気持ちが、繋いだ手から伝わればいい。 そう思いながら、やわらかな手を握って暗い廊下を歩いた。 メイリンの房室に着くと、火鉢には火が入っていて、数人の侍女が控えていた。 「おまえ達、こんな夜遅くに起こして、済まなかった。」 メイリンが詫びると、侍女達はにっこり笑って応え、なめらかな動作で主人の髪をほどき、衣を脱がせて 体を拭いたりし始めた。 僕はメイリン付きの従者で、いわゆる『男ではない』扱いなので、こういうときも外に出されたりしない。 男としてのものを要求されるときもあるのに……と納得いかない思いだが、毎回、目のやり場に困って いいのか眼福に喜んでいいのか迷う。 「今日はもう遅いし、わたしも疲れた…。簡単でいい。 薬酒で体を温めてから眠る……。ユゥ、わたしのお気に入りのやつ、出してきて。」 用事を言いつけられ、この場を離れられることに、ちょっと安心する。 『お気に入りのやつ』というのは、実は薬酒でもなんでもなく、ただの梅酒だ。メイリンの御自慢の梅林で 取れた梅の実を、メイリンのお気に入りの配合で漬けたやつ。毎年甕ひとつ分は自分用に取り置きしているらしい。 梅酒を薬酒の括りに入れるの? と僕が怪訝な顔をするといつも、『梅は古来より不老長寿の妙薬として 珍重されてきたのだぞ!! だからこれは薬酒!!』と、真っ赤な顔で反論して、可愛い。 メイリンとしてはシン国の基準で言えば成人していないので飲酒は禁じられているが、薬酒はその範疇では ないので可、ということらしい。真面目なんだか不真面目なんだか。 やはりメイリンお気に入りの、模様の付いた細瓶に入った梅酒を隣室の棚から取ってくると、着替えの 終わったメイリンが、目をしょぼしょぼさせながら小卓の脇の椅子に腰掛けていた。 「お湯を持ってきて貰ったから、割って温かいのが飲みたい。ユゥも飲む?」 「お供します、姫様。」 メイリンに酒を勧められたら断らないのが二人の間の小さな約束事だ。断るとメイリンが拗ねるのだ。 僕は深めの杯に梅酒を注いでお湯で割って差し出す。メイリンがいつも飲む、六対四の比率で。 自分用にも同じようにして注いでいると、とろんとした瞳で杯に口をつけながら、メイリンが言った。 「姫様、じゃなくてメイリン、って呼ぶの。」 「はい、メイリン。」 まだ後片付けをしている侍女が傍にいて、決して二人きりというわけではなかったが、僕は迷わずそう呼んだ。 メイリンの言うことなら何でも聞いてあげたかったし、何よりそう呼びたかった。 「はいもだめ。そんなによそよそしい言い方しないで。」 「うん、メイリン。君の言う通りにする。」 後ろで扉の閉まる気配がする。最後の侍女がいまそっと、音を立てないよう出て行った。 「ふふ……ユゥ、今日は素直。」 椅子の背もたれにもたれかかりながら、メイリンは蕩けた表情で笑った。もう酔っているのだろうか。 それとも、単に疲れて眠いから、こんな風に妙に色っぽくなっているのだろうか。 もしそうなら、他の男の前で疲れたり眠くなったりするのは、是非止めて頂きたい。 「仲直り、したいから……。あの、鄭おばさんが、そのほうが姫様が喜ぶって、だから……。」 出て行けとか、この期に及んで言われたらどうしよう、と一抹の不安がよぎる。しかしメイリンの 答えはあっさりしていた。 「ふむ、さっき、許すと言ったのに。それに、月のものも順調に来たし。」 月のもの────。 そのときはじめて、メイリンに僕の子供を宿して貰いたかったんだ、それが一番の望みだったんだ、と気付く。 その目論みはとうに失敗していた。 例え妊娠していても、強制的に堕胎させられるなら、失敗した方が良かったに決まっているが、もし 子供が出来ていたら、メイリンがどうしたのか知りたかった。 怒るのか、泣くのか、少しは悩むのか、それとも──? 「仲直りは……せねばならぬ。これからもっと……いそがしく、なる。ユゥにはてつだって…もらわねば。 なにか……たりぬかの? ……そうだ。」 メイリンのろれつの廻らなくなってきた言葉をぼんやりと聞いていると、突然、メイリンは隣の椅子に 座っていた僕の首に腕を廻し、しなだれかかってきた。何が起こったのかわからず固まっている僕の唇に、 なにか、柔らかいものが触れる。 瞬間、すべての音も気配も弾け飛び、世界は僕とメイリンだけになる。 甘い、甘い世界。他には何もいらない。 君が欲しい、君が。もう全部、僕に頂戴─── 「……ぷはっ!!」 苦しげにメイリンが息継ぎする声で我に返った。つい夢中になって加減を忘れてしまったみたいだ。 「もぉっ、そんなに激しくくちづけたら、息ができないよ。もっと、やさしく……。」 抗議する声も、少し怒ったような表情も、可愛くて愛しくて仕方がない。 僕は、どうかしてしまったんだろうか? メイリンは、僕の首に腕を廻したまま、僕の膝の上でころんと丸くなった。 「でも、これで仲直りね。もう、眠くなっちゃった。寝台に連れて行って、ユゥ。」 なんだか、メイリンの方も、いつもより甘えたがりになってるような気がする。 言われた通りに細い体を抱えて立ち上がると腕の中のメイリンがぽつりと言った。 「わたしねえ、すっごく大変だったの……。でもすっごく頑張ったの……。だからほめて、思いっきり。」 「頑張ったんだね、メイリン。」 何のことかは分からないけど僕は素直に褒めた。 メイリンは、滅多にこういう自慢はしない。そのメイリンが、自分から大変で頑張ったなんて言うほどなら、 それは本当にそうなのだろう。 「それからぁ。」 急速にろれつの廻らなくなってきた舌で、メイリンはなおも喋ろうとする。 「さっきわたしのこと……、すきって…、いった……。あれ、ほんと?」 「本当だよ。」 「そぉゆうときはぁっ、すきだよメイリン、って、ゆうのぉっ。」 メイリンは身体もくてんとしてきて、瞼も重く、いまにも寝てしまいそうだ。明日になっても、いまの会話を 憶えているかどうか怪しい。 それでもいま、言ってみたかった。 「好きだよ、メイリン。」 メイリンはまるで上等のお菓子を食べたときのようにくふふ、と笑って、言った。 「わたしもよ。」 それからまた、くふふ、と笑う。 ちょっと待って、それってどういう意味なの。 「いっぱい、はなさなきゃいけないことがある……。でももうねむいから、またあした。」 そうっと寝台に下ろしてあげると、メイリンはほとんど寝ているようだった。ただし、僕の袖は離さない。 「きょうはねぇ、よとぎはなし。でもさむいからぁ、ずっとそばにいて、あたためて。 それからぁ、わたしがねむるまで、かみをなでていて。がんばった、ごほうびに。」 一緒にいることを許されて、胸の中に灯がともったようになる。 「君の望むままに、メイリン。」 ほとんど意識を失う寸前まで僕に甘え続けるメイリンを、どうしてこんなに可愛く感じるんだろう。僕が 隣に身を横たえると、小さな子供のように擦り寄ってくる。 寝入りばなを起こされて、ちょっと目が冴えてしまったけれど、今夜はメイリンの寝顔を見ていられれば もう他は何も望まなかった。 拭いただけの髪からも、冷たさの残る手足からも、旅の匂いがした。 どこをどう旅して、何を頑張ってきたのだろう。 手伝って欲しいことって、なに。君の傍に、僕の居場所はあるの。 好きって、どういう意味。 君にとって、僕はなに。 訊きたい事は山ほどあったけど、触れ合っているうちに、すべてどこかへ溶けてゆく。 何度か髪を撫でているうちに、すうっと、メイリンの息が寝息に変わっていった。 好きだよ、メイリン。 おやすみ。 ──続く──
https://w.atwiki.jp/horserace/pages/206.html
カフェオリンポスをお気に入りに追加 カフェオリンポスの情報をまとめています。リンク先には学生・未成年の方には不適切な表現内容が含まれる場合があります。またリンク先の内容を保証するものではありません。ご自身の責任でクリックしてください。 カフェオリンポス <保存課> 使い方 サイト名 URL カフェオリンポス <情報1課> #bf カフェオリンポス <情報2課> #blogsearch2 カフェオリンポス <情報3課> #technorati カフェオリンポス <報道課> 【ウマ娘が1.8倍楽しくなるお話 8】ウマ娘の運命は、現実のレース以外でも紡がれていたりするんだねって話 - 電撃オンライン ローガン・ラーマン主演『パーシー・ジャクソン』シリーズがDisney+に登場 - cinemacafe.net 【東京スプリントレース後コメント】リュウノユキナ柴田善臣騎手ら - netkeiba.com 【フェブラリーS】GI初制覇カフェファラオ新砂王だ! - サンケイスポーツ カフェオリンポス <成分解析課> カフェオリンポスの79%は不思議で出来ています。カフェオリンポスの16%は怨念で出来ています。カフェオリンポスの3%は呪詛で出来ています。カフェオリンポスの2%は野望で出来ています。 ページ先頭へ version3.0
https://w.atwiki.jp/princess-ss/pages/192.html
その年の秋、僕らの『クニ』は滅んだ。 新たな領地の領有を主張して大国シン国と衝突し、開戦した。 戦いが始まってしまえば、力の差は歴然としていた。圧倒的な兵力の差に、僕らはなすすべもなく踏み潰されるしかなかった。 静かな山地である桂花山で、ひっそりと焼畑による農業を営む僕たちが、どうして大国シン国と戦を構えなければならなかったのかと言えば──ただ、飢えていたのだ。 はじまりは、旱魃による不作だった。暑く、雨の降らない夏があり、井戸は枯れ、川は干上がり、 作物は収穫を待たずして枯れた。 その年は、まだ良かった。僅かながら蓄えもあったし、森の恵みはまだ充分にあり、食べられる 木の実や野草、それに森の獣や鳥を狩って凌ぐことができた。 だが、次の年は、寒い夏だった。 作物はまたしても実らず、森の木の実も多くは青いままだった。 僕らのクニにあった蓄えは、そこで尽きた。次の年まで食いつなぐには、野草や木の皮、木の根まで、 口にできるありとあらゆるものを食べた。 次の年にはほどほどの実りがあったが、蓄えが尽きていた僕らは早い時期に収穫せねばならなかった。 その頃から森は荒れ、森の獣も鳥も、目に見えて減っていた。 まるで何かの、歯車が狂ってしまったようだった。焼畑のために放った火ではなく、失火による 山火事も何度かあったし、僕らは尽きた蓄えを増やせないまま、収穫の細った森の恵みに頼っていた。 僕自身もまた、何年ものあいだ、お腹いっぱいに食べたことなんてほとんどなかった。桂花の民の中には 飢えのために病に罹って死ぬ者もいた。 僕らはシン国とは極力交流を持たずに暮らしていたが、こっそりと山を下りて食糧を調達してくる者たちも いた。けれど元々、僕らにはシン国で価値のある財貨などの蓄えもなく、僅かな宝石などの家宝も次々と 買い叩かれたのだった。 そして、この夏。 前の旱魃から五年目に当たる年、再びひどい旱魃に見舞われたのを機に、僕らは遠い祖先が領有していた という山の麓のいくつかの丘地の所有権を要求した。当然その土地の現在の主であるシン国は僕らの勝手を 許さず、交渉は決裂して秋には開戦に至った。 僕らの『クニ』だって、全く勝算がないまま戦を始めたわけではない。多くの桂花の民はそう思っていた のだろう。 もう昔語りにしか残らないほど遠い昔、シン国の前の前の王朝あたりのときに、この巨大な中華の国と 戦って、そこそこの勝利を収めていたのだ。 しかしそのときの戦いは、自陣に深く敵を誘い込んでの、地の利を生かした戦いだった。狭い山道では、 おのずと敵兵も細い列にならざるを得ない。そのときの桂花の民は、鬱蒼とした森の木々の間に身を 潜めての挟撃、岩落とし、炎攻めなどを駆使して敵将を討ち取ったらしい。 あとから考えると、僕らが地の利のある桂花山を降りて戦おうとした時点で、もう負けは見えていたと 言わざるを得ない。そして後でシン国側に残った前の戦いの記録を見せてもらったことがあるが、前に 僕らが勝ったと思っていた時の王朝は、さして大きな国でもなく、既に内政は乱れており、山奥の蛮族 との戦いにあまり重きを置いていなかった。 桂花山はさして魅力のある土地でもなく、そのときの王は、境界線をほどほどのところで引いて終わりに するのをよしとしたのだ。 この秋、身の程知らずの要求をした山奥の弱小民族に対して、シン国は精鋭の正規軍を差し向けた。 初めからあまり時間をかけず、短期決戦の構えだった。 そして僕らは、捻り潰された。 残った人々は、女子供に至るまで全て捕虜となり、先祖代々の土地を離れてシン国に隷属することになる。 それでも、僕は願った。 お願いだから、あきらめてしまわないで。どうか、生き残って。 狂った歯車は元に戻せないと、全てを投げ捨ててしまわないで。 たとえ桂花の山を失い、散り散りになったとしても、僕らの誇りを忘れないで。 貧しくとも僕らは山の神々と共に生きていた。どこへ行くにしても、神々はきっと僕らとともに在る。 僕の切実な訴えは、果たしてどのくらい彼らに届いたのだろうか。 桂花の民の先陣部隊は、ほとんどがあっという間に戦死するか、捕らえられてしまった。 ──残った後続部隊と、里に残る女子供を、我々シン国の指示に従うよう、説得すること。 それがあの『偉い人』と交わした約束だった。 ──彼らは全て捕虜となってこの地を離れて貰う。 従順である限りは、身の安全と食の確保を約束しよう。 ただし、反抗する者は、即座に斬る。 戦のときに負った傷が元で、その後すぐに高熱を出してしまい、どこかの施療院らしきところに 放り込まれてしまったので、生き残った人たちがその後どうなったのか僕は知らない。 何日くらいそこで、寝ていたのかも憶えていない。ともかく傷が癒えるまではそこで留め置かれ、 それから王都までの長い旅程を馬車の荷台で辿ることになる。 * * * 「……。」 「……。」 「……。」 「……。」 夕方になって帰宅したメイリンの家族との対面は、まず無言の睨み合いから始まった。 メイリンの言ったとおり、昼に着替えをさせてもらったものの、僕の両腕にはまだ木製の手枷が 嵌ったままだ。 「父上はいつもの通り、どこかへお出かけになっておられる。母上もいつもの通り、お仕事が忙しく、 帰りは夜半頃になるであろうと。 というわけで、いま会わせておけるわたしの家族を紹介しておく。 一番右に居られるのがわたしの上の兄君で、ユイウ兄様。刑部で市中警邏の仕事をなさっておられる。 その横が、下の兄君で、スゥフォン兄様。こちらは戸部の通商部で、王都と他地域の商いの認可の お仕事をなさっておられる。 一番左が、わたしの弟。名前はシゥウェン。わたしと同じ盛陽学院に通っており、なかなかの秀才だ。」 その中でひとり、上機嫌で話し続けているのが、メイリン。にこにこと僕のほうを見て喋っているので 気付かないようだが、後ろのメイリンの兄弟たちは揃って僕のことを視線だけで射殺しそうな勢いで 睨んでいる。なんか恐い。 「…ねっ、兄上様?」 くるりとメイリンが振り返った途端に、妹に柔和に微笑む兄の笑顔に早変わりして、その見事な豹変ぶりに 僕は目を剥く。弟のほうは若干無表情で、視線の険しさが瞬時に消えるくらいか。 恐い。シン国人なんか恐い。 「兄上様たちにはかねてからの約束通り、ユゥに武芸と学問を教えて頂く。 ユイウ兄様には剣技を、スゥフォン兄様には地理と通商学と歴史学をひととおり。 そのほかはわたしが教える。」 「姉様、僕は?」 一呼吸置いて、一番左にいたメイリンの弟が声を上げた。 「ああ、シゥウェン。おまえの賢さはよく分かっているが、まだ幼い。 いまは自分の学業にしっかりと励め。必要以上に他人に時間をかける必要はない。 おまえの賢さには、皆が期待しているのだからな。」 メイリンは急にお姉さんぶった口調で話し始める。 「姉様だってまだ学院生でしょう。そんなのに関わっている暇は、ないんじゃないの。」 「ふむ。そうは言っても、ユゥはわたしの従僕として頂いたのだから、私が責任を持って教育せねばならぬ。」 彼は少し幼さの残る顔立ちを、不満そうに歪めた。メイリンよりも二、三歳下だろうか。 「俺達年長の奴らにはもう期待も何も無いから手伝えって?」 右側に立っていた年長の兄、と紹介された男の人が口を開いた。一番背が高く、鍛え上げられた精悍な 体つきをしている。男らしい顔立ちだが、目元はメイリンにそっくりだ。 「そんな、兄上様方はそれぞれの部署で将来を嘱望される優秀な人材ではありませんか。だからこそ、 ユゥの教育に力をお貸しいただきたいとお願いしたはずです。 特に、ユイウ兄様の剣技は既に母上様をも凌駕するほどです。ユゥは是非、兄上様の御指導を 賜りたいのです。」 「確かに山出しの小僧がひとり、来るとは聞いていたが……こんなどこの馬の骨とも知れん奴とは 聞いていない。」 「何を仰っておいでです? ユゥはウォン家の三男、身元はしっかりしております。」 彼は少し苛々したように視線を彷徨わせた。 「それがしっかりした内に入るか。……そうではなく、おまえ付きだとは聞いていない。」 「ユイウ兄様、兄様もわたしが父上にそのことをお願いした、あの場にいらしたではありませんか。」 メイリンはくすり、と笑った。 「……だからわざわざ俺に分からん言葉を使って交渉したのか!! あんな辺鄙な山奥の方言など、いちいち憶えられるか!!」 メイリンと上の兄君が言い合っている間、僕はスゥフォンと紹介された次兄から観察されて、いや、 静かに睨みつけられていた。 顔立ちは、メイリンの父親であるあの『偉い人』に一番似ているかもしれない。少し癖のある髪を 結い上げて、整った、表情の読めない顔をこちらに向けて、深い色の瞳でじっ……とこちらを見ている。 なんというか、蛇に睨まれた蛙というのは、こんな気持ちなんだろうか。見られているだけなのに、 脂汗が出る。 「兄様、わたくしのたってのお願い、聞き届けていただけませんか?」 少し次兄のほうに気を取られている間に、メイリンが褒める戦術から媚びる戦術へと路線変更したようだ。 僕にも妹がいるから分かる。とびっきりの可愛い声で、少し上目遣いに媚びた目で『お願い』する、 特に可愛がられている妹ならではの必殺技だ。 「……っ。別に、駄目だとは言っておらぬ。父上から仰せつかっていることだしな。」 そして可愛い妹を持つ兄の例に漏れず、この家の長兄もまたメイリン必殺の『お願い』には弱いようだった。 「良かった、ユイウ兄様、大好きっ。」 メイリンは、背の高い兄にぎゅっと抱きついた。多分この兄妹の中で、メイリンが最強なんじゃないだろうか。 「ところでメイリン、教える範囲なんだけど」 僕を静かに睨んでいたメイリンの次兄は、すっと表情を入れ替えるようにして柔和な笑顔を浮かべて メイリンに話しかけた。 その隙に長兄のユイウという人が、僕とがっしりと肩を組んで、メイリンに背を向けるようにして話し始める。 「よぉ、馬の骨。」 不穏だ。口許は笑っているが、目は笑っていない。 表情を強張らせた僕に、彼は低い声で訊いた。 「おまえ、うちの妹に手を出したのか。」 「えっ?」 「訊かれたことには正直に答えろ。おまえ、昨夜うちの妹に手を出したのか。」 かなり、恐い。でも、メイリンは兄達に焚きつけられたとか言ってたので、ここは正直に答えておかないと まずい気がする。 「出しました。」 「最後までか。」 「最後までです。」 「よし、死んどけ。」 彼は表情も変えずにそう言った。 ひっ、という短い悲鳴さえ上げる余裕は無かった。せめて何か抵抗しようにも、手枷が嵌っていて自由に 動けない。視界がじんわりと暗く霞み、訳も分からぬまま闇の底に沈んでゆくような感覚に恐怖した、そのとき。 「ユイウ兄様、ユゥを苛めないでっ!」 メイリンの、声がした。 首に巻きついていた腕が離れ、げほげほごほごほ、と咳き込みながらやっと、息が苦しいという感覚もなしに 首を絞められていたのだと気付く。 「苛めてるんじゃない、既に稽古だ。手の自由を奪われたくらいで弱くなるなど、本当の強さじゃない。」 座り込んで頭痛と眩暈に耐えている僕の視界に、いい匂いと共にふわりとメイリンの裳裾がひらめく。 「もぉっ!! そういうのは、ユイウ兄様くらいの達人の話でしょう!! ユゥはまだこれからなのだから、弱い者いじめです!! 手枷がついてるうちは、兄上様達に任せては危ない。稽古は手枷が外れてからですっ!!」 メイリンは怒ったようにそう言い放つと、僕の手枷の嵌められた手を取って歩き出した。 僕はふんわりとした服の裾が僕の服に纏わりつくようにひらひらと舞うのを、不思議な気持ちで眺めていた。 「父上のお許しが出れば、その面倒な枷も外して貰える。 明日か、多分明後日までにはお許しが出ると思う。『二、三日大人しくしていれば』、外してくださると 仰ったから。 だからユゥ、しばらくは、大人しくしていてね。」 しばらくも何も、こんな手枷をつけたまま大人しくする以外にどうしていればいいのだろう。 「父上は一旦お出かけになったらいつお戻りになるか分からないからね。ひと月お戻りにならない こともざらだよ。」 後ろから、メイリンの次兄のスゥフォン様が口を挟んできた。あくまで優しげな口調で。しかしその 内容には毒が含まれている。 「違いますっ! わたくしに二、三日と約束なさったのだから、父上はちゃんとお戻りになられますっ!!」 「いいから離れろ、年頃の娘が、はしたない」 今度は大きな手がぐい、と僕とメイリンをふたつに分けた。上の兄、ユイウ様だ。 「兄上様方、今日はもういいですっ!! 後はわたしが、邸を案内しますから!!」 「案内なら俺たちもいたほうがいいだろう、なあ?」 後ろを見ると、メイリンの兄弟たちは三人とも付いてきていた。 メイリンに小声で聞いてみる。 「なんか昨日、『兄上達に焚きつけられたから』みたいなこと、言ってなかった? それにしては雰囲気がやけに恐いんだけど。」 「ど・こ・の・世界に、可愛い妹にふしだらなことを焚き付ける兄がいる?! 常識的に考えろ!! もう一遍死んどくか?!」 即座に頭上から威圧的な声が降ってくる。うわあ、昨日の今日で常識を要求されるとは思わなかった。 常識ってどこに行けば貰えますか。それって美味しいですか。是非教えていただきたい。 「兄上様達は、いつもこうなのだ。わたしが何かしらしようとすると、いつもお前には無理だ、 やめておけと邪魔をなさる。だからわたしは必ずやり遂げる、と宣言したのだ。」 メイリンは少し口を尖らせて言った。彼女の中では全くこの論理に矛盾は無いようだった。 そういえば昨日、父親の意向についてはしつこいくらいに聞いたけど、兄君の意向については言及し忘れたような。 「くっ…! この、はねっかえりが……!!」 屈強そうなメイリンの兄は苦々しげに言った。でもその言葉の端々に、妹をどうしようもなく可愛く 思っている兄の情が滲み出ている。 それで漸く、さっきから命の危険に晒されている理由が分かってきた。 メイリンの兄弟にとっては、僕は可愛い妹に付いた悪い虫。つまんで地面に捨てて踏み潰したい存在なのだ。 一応僕にも妹がいるので、その気持ちだけは分かる。 「それにしても、あれだけメイリンを溺愛している父上が、こういう下僕の存在を許すとはな。 来たとたんに一刀両断にされるかと思っていたが。」 「僕は端から細切れにして塩漬けにされるかと思っていたけどね。」 あくまで無骨そうな長兄に、次兄が優雅に応える。しかしその内容は、優雅とは程遠い。 「気にするな。兄上様方も、こういった御冗談がお好きなのだ。」 微妙な表情をしている僕を覗き込んで、花のような笑顔を浮かべたメイリンがそう言う。 メイリンの中では、完全に冗談ということで決着済みのようだった。が、僕には完全に本気にしか見えない。 「あ、あのね。さっき学問とか武芸とか言ってたけど、なんのこと? 僕はこれからここで、何をすればいいの?」 「馴れ馴れしい口を利くな。身分を弁えろ。」 メイリンに尋ねると、答えより先に後ろから厳しい声がかかる。 「ふむ。ユゥはわたしが貰った、わたしの従者。わたしの役に立つ人材になって貰う」 武芸だの学問だのと、奴隷には過ぎた待遇のような気もするが、そうか、役に立つためにはそれなりに 物を知っておけと言うことか。 「つまり、今のままでは全く役に立たない邪魔者というわけだね。」 やはり後ろから茶々が入る。 「もぉっ! スゥフォン兄様までっ!! 邪魔なのは兄上様のほうです、もうついてこないでっ!!」 「本当のことですよ、姉上。現状は正しく認識しないと、成長もありません。」 「シゥウェンまで。もう、う〜る〜さ〜い〜!」 メイリンはうんざりした声を出した。でも、だんだんこの兄弟の関係が見えてきた。 一番上の兄、ユイウ様は、強そう。そしてやや無骨。 二番目の兄、スゥフォン様は、上品だけど中身は怖そう。 メイリンの弟、シゥウェンは無口で、たまに言う一言がキツい。 兄弟仲は良く、そしてみんな、メイリンが好き。必然的にメイリンにつく悪い虫、僕のことは嫌い。 僕の立場は結構微妙なとこにあるみたいだ。 特に上の兄、首を締められて数秒で意識が遠のくとか、危険すぎる。 回廊を歩いていたメイリンが、ひた、と歩を止める。 「ここから向こうが、北の棟。北の棟は、父上と母上の居室。入っては駄目、憶えておいて。」 僕は辺りを見廻して、回廊脇の中庭に橙の木があるのを見つけた。美しく色づいた実が、もがれずにいくつも 実っている。夕暮れの明かりの中でその枝ぶりと葉の大きさを、僕は必死に記憶に留めた。 「母上は厳格な方だからな。おまえがメイリンに手を出したことが知れたら、即座にぶった斬られるぞ。」 上の兄、ユイウ様は楽しそうにそう言った。 「やめてください兄上。ユゥが固まっています。 大丈夫だからね、ユゥ。母上様は厳しいが、慈愛に満ちた方だ。ちゃんと話せば、必ず分かって下さる。 その……えーっと、近々、ちゃんと話す。それまではくれぐれも、北の棟には足を踏み入れないで。」 メイリンは最後のほう、目を泳がせて言った。ちょっと本当に大丈夫なの。 「メイリンは、母上の厳しさを甘く見すぎだ。むしろ今夜にでも行って、早々に斬られればすっきりする。」 「わだかまりは早いうちに解消したほうがいいしね。」 もちろん後ろの兄君達は上機嫌だ。振り返るとメイリンの弟も無言で頷いて同意を示している。 「もぉっ! みんな、ユゥは……わたしの、大事な、従者なのだから、苛めないでっ。 行こう、ユゥ。」 メイリンは枷のついた僕の腕に、細い腕を絡ませて早足で歩き出す。でもその速さは、後ろの兄弟を 完全に振り切ってしまうほどではなくて、やはり兄妹の仲の良さを感じさせた。 「ちょっと待て、おまえら、くっつき過ぎだ。」 「兄上っ! ユゥの件は、他でもない、父上様にお許しを得ているのですっ!! ですから、兄上であろうと、例え母上様であろうと、文句は言わせませんっ!!」 年上の兄君達も、メイリンの気迫にはちょっと気圧されたようだった。でもメイリン、そんなに ぎゅっと腕を抱え込まれたら、その……胸のふくらみが…当たる。 「まあ…いいか。そのうちそいつがヘマをして、父上に斬られることになるだろうしな」 「ユイウ兄様は、野蛮だなあ。一刀両断なんて、苦痛を感じさせる暇もないじゃないか。 殺すにしても、もっとじっくりゆっくり苦痛を味あわせてからにしないと。」 「…おまえ、そういうとこは父上似だよな。」 後ろのふたりは、僕に聞かせるように会話している。多分…気にしたら負けだ。 「もぉっ! 兄上様方、ユゥが怯えますっ! 父上様とて道理を弁えた御方、わたしの大切な従者であるユゥに、非道はなさいません!!」 メイリンはあくまでそんなことはないと言い張る。 「ユゥ、わたしはおまえの主。おまえの事は、わたしが守るから。」 メイリンは揺るがない瞳とまっすぐな声でそんなことを口にする。僕が守られる側ってのはちょっと 情けないが、こんなときのメイリンはかっこいい。どのみち僕としては、メイリンを信じてついて 行くしかなさそうだ。 それはそれとして……当たってる、柔らかいとこが。 「ユゥの当面の目標は……そうだな、まずはわが国のことを学び、わが国の考え方を、知恵を学び…… その上で、おまえの『クニ』とわたし達の国が、なぜ戦わねばならなかったのか、他の道はなかったのか、 おまえの言葉で、わたしに語れ。」 「……えっ。」 なぜ、戦わねばならなかったのか。こんなにも巨大で、圧倒的な国を相手に。 そんなこと、僕が聞きたい。 メイリンは、僕の動揺が分かったみたいだ。 「案ずるな、お前の知らぬことを、答えよという訳ではない。 ただ、おまえの部族の者は皆、頑なで、自らの都合をまくし立てるばかりで話にならぬのだ。 いまは……まだよい。わたしとおまえでは、育った土壌も、培ってきた知識も習慣も、何もかもが まるで違う。 まずは学ぶのだ、この国の在りようと、文化と技術を。そしてわたし達が見てきたものを知り、 同じように世界を見ることが出来るようになって、その上でおまえの知るところを語れ。」 メイリンが何を聞きたいのか、何を知りたいのか、今の僕には分からなかった。 ただあの戦が、僕達が何もかもを失った愚かなあの戦が、何故起こったのか。それは、僕こそが知りたい ことだ。 もしかしたら、故郷に向かう道筋も、その中から見えてくるかもしれない。 「わかった。……よくは分からないけど、頑張ってみる。 僕も、君と同じ世界が、見てみたい。なるべく、御期待に沿えるよう、努力するよ。」 僕の新しいご主人様、綺麗で可愛くてちょっとかっこいい高貴なお姫様のメイリンは、はにかんだように 少し笑った。 * * * その夜も、普通にメイリンの房室に呼ばれた。 メイリンは、僕を迎え入れると、貝の容れ物に入った軟膏を出して、僕の手首の手枷で擦れた部分に 塗ってくれた。木製の手枷と手首の隙間に、細くてなめらかな指を入れて、白い軟膏をくるくると塗って ゆくのが妙にくすぐったい。 「じきに、この面倒な手枷も取れる。そうしたらもっとちゃんと塗ってやる。 痕に、ならなければいいけど。」 「この程度の擦り傷に、薬なんて勿体ないよ。放っときゃ治るよ。」 メイリンは形のいい唇をキッと引き結んで言う。 「そういうわけには、いかぬ。甘く見ていて、化膿したらどうする。 第一、痕が残ったら、わたしが、見るたびに痛い。」 それからぽうっと、頬を薄赤く染める。 「その……昨夜は、無理をかけて、済まなかった。 なるべく、ああいう、無理強いはしないから。」 僕も昨日のメイリンを思い出してかあっと顔が熱くなる。 確かにちょっと強引だったけど……、可愛くて柔らかくて熱くて濡れて、一言で要約するなら……最高だった。 「今日は兄上達がうるさくて疲れた……もう寝よう。」 メイリンは僕を寝台まで連れて行き、としっ、と押して横向きに倒れ込ませる。 「あれ? さっき、無理強いはしないって……」 「うん、しない。だから、今日は眠るだけ。」 メイリンは爽やかな笑顔でそう返した。眠るだけ……ってちょっと。 「僕の寝る場所は、使用人部屋の端の方に確保してあるって、案内されたんだけど。」 「そんなものは、放っておけばよい。こちらの方が断然広いし、一人くらい増えても平気だ。寝具だって、 間違いなくこちらの方が良い物だぞ。」 メイリンは横向きに倒れっぱなしの僕にのしかかるようにして顔を覗き込む。 「ユゥは……わたしのこと、嫌い? 一緒に眠るだけも、いや?」 「嫌い……では、ないけど……」 いやあのね。嫌いじゃないからこそ、そういうの、困るんだけど。 「ならば、良いであろ? これから寒い季節になる。ふたりで、眠った方が暖かい。」 メイリンはそのままちゅっと、僕の頬にくちづけた。だから、そういうのが、困るんだってば。 結局僕はメイリンに上質な布団の中に引きずり込まれてしまった。横向きに寝て、両手は前で手枷に 拘束されたまま、後ろにはメイリンがくっついて、腕さえ廻してくる。 「ふふ…、やっぱり、暖かくて、気持ちいい。」 眠たげな声でそう言うメイリン。少しの間、冷たい足を絡めて来たりとごそごそやっていたが、 触れ合った足先が温まってくる頃には、もう健やかな寝息が聞こえてきた。 ──昨日の今日で、どうしてそう簡単に眠ってしまえる?! そりゃあ朝早くに起きて夕方まで出かけていたメイリンと、言いつけ通りにゆっくり過ごしていた 僕とでは、疲れ方も違うんだろうけど。 両手を拘束されて、背中側にはとびっきりの可愛い女の子が寝ていて。 こんな状況で眠れる男がいたら、そいつは絶対に神経がおかしい。 昨夜とは違う意味で、なんの拷問。 なんだか、メイリンの兄弟も不穏だし、メイリンの母親も、父親も安全とは言いがたい。 でも、一番の脅威は、メイリンじゃないかと思うんだ。 暴力的なまでの可愛さ、有無を言わせぬ強引さ、巧妙に仕組まれているとしか思えない、危なっかしさ。 いつか故郷に帰れるその日まで、本当にこの邸で生き抜いていけるのだろうか。 僕は二晩目にして、早速不安になってきた。 とりあえず、今晩をどう乗り切ればいいのか分からない。 後ろでメイリンがこてんと寝返りを打った。まさかとは思っていたが、しっかりと気持ちよさげに 眠っていらっしゃる?! なんて可愛くて、残酷な凶器なんだろう。 耐えろ、耐えろ僕。 故郷の土を踏むまでは、どんなことにも耐えてみせると、誓ったじゃないか。 どんなに夜が耐え難くて辛くて長くても、いつか、朝は来るのだから。 ……多分。 ───続く───
https://w.atwiki.jp/mahousyoujo/pages/143.html
クロウ合流 ギ「メイリンさんは何処かなぁ?」 あっと言う間に地面の降り立つギズモ まずはメイレンを見つけなければ話にならない 見つけることが出来れば約8分40秒で ギ「とりあえず作業は終わったよv」 と言う事になるであろう ギ「あっ!いた!」 ギズモは、 屋上から一階に到着し、その衝撃で足が痺れて動けないメイリンに近づいていった。 メイリンは振り返らなかったが、ギズモとゲロロ(義手)はちゃんと“見えていた”。 リン\ダーリンktkr/ と棒メイリンがwktkしていてもギズモにはわからないだろう。 一つ確かなのは、ギズモがメイリンにゲロロ(義手)を装着しようとすれば、 メイリンは快くそれに応じるだろう。 ギ「とりあえず義手を取り付けるよいい?答えは聞いてない」 と何故か鈴ボイスで話すギズモ ギ「これをこうしてこうすれば・・・・出来たv」 かかった時間は約8分40秒である ギ「じゃあ終わった所で迎えに行こう」 と玄関に向かうギズモであった メイリンは首を縦に振った。最高にハイな気持ちだからだ。 二人は一緒に玄関に向かった。 メイリンはメイレンを呼び出す前にそうしたように、せっせと階段を昇って行った。 どうやらメイファが約8分40秒の間に屋上に向かって移動していたようなのだ。 そして、メイリンはギズモを引きつれてある教室に入った。 すぐ近くから悲鳴や血の匂いや雷の音が聞こえたりしているが、 メイリンは特に気にする様子もない。 教室に入ったメイリンは、迷うことなく一つのロッカーを開けた。 リン\\!// 中にはメイファが入っていた。メイファはびっくりした様子だった。 ファ『リン姉ちゃん!中つ国に帰ったんじゃなかったの!?』 ギズモは、中つ国語で話すメイファの言葉がわからなかったかもしれない。 それ以前に、この幼女がメイファであるなどとわかる理由も無いだろう。 しかし、ギズモがあえて「これがメイファであるか?」とメイリンに尋ねる必要も無かった。 メイリンがメイファの手を取ってロッカーから出すと、優しく抱きしめたのだから。 フリ「ギズモちゃんギズモちゃん今一体全体どこにいますの?」 ギ「あ、お母さんからだ」 懐からカードのようなものを取り出しフリージアからの念話を受け取るギズモ ちなみにカードには氷結姫フリージアと言う名前とフリージアのイラストが描かれている ちなみに 魔法使い族 水属性 LV5 攻撃力2300 防御力1500特殊能力は秘密vだ ギ「一階だよvえ~と」 ギ「メイリンさんがメイファさんらしき人と抱き合ってるよ」 フリ「人?人間の姿ですの?」 フリージアは考えた・・・・・ギズモは人間の姿をしているが本質はグレムリンである それは何故かと言えば人間と暮らすには人間の姿が都合がいいからである 故にメイファが人間の姿に変身できても不思議ではない それとも人間のような姿が本当の姿なのだろうか? フリ「一体どんな姿ですの?」 ギ「頭に金の輪をつけた赤い目のかわいいかわいい女の子だよ」 やたらかわいいを強調するギズモ そんな事いい加減な事言ってるとそのうちナイスボートだ フリ「まあ・・・・わざわざ不細工に変身する物好きはいませんわね」 (その頃のギズモ) ギ「!?・・・・なんとなくお母さんが無茶苦茶なことを言っているような気がする」 魔力のラインがつながっているためか?それとも突っ込み属性のためか それは誰も知らない・・・・・ 状況報告をしたはいいが特にやることもないギズモ ギ「とりあえず僕はお母さんのところに行くけどメイリンさんはどうするの?」 しかし、それでもメイリンはギズモに向かって首を横に振った。 これをどうとるかはギズモの勝手である。 ファ『あなたがお母さんを呼んだのね!』 メイリンの様子を見て何かを悟ったのか、メイファはメイリンを振りほどいた。 ファ『どうして私の邪魔をするの?リン姉ちゃんだって、魔法使いを憎んでいるのに! お母さんを呼んで私を連れ帰ってもらおうなんて! それに、お母さんの力は昔より弱くなっているわ!魔法使い共に人質にでもされたらどうするのよ!?』 メイファはメイリンを罵った後、後悔の念にかられた。メイリンを批判した事ではなく、別の事でだ。 ファ『たいへん!早くテン姉ちゃんの“点穴針”を取ってあげなきゃ!』 メイファは教室を飛び出した。メイリンも当然のように後を追いかけた。 フリージアと合流しようと先を急ぐギズモ ギ「あ!お母さ・・・・・ぎゃあ!?」 やっと現場に到着したギズモの目に飛び込んで来たのは首の無い自分の主人であった ショックが大きすぎたせいでそれが人形だとは気づくことが出来ない 近くに転がるフリージア(人形)の頭を拾い上げるギズモ ギ「これ・・・・母さんです」 思わずそんな台詞が口から出るギズモであった 「キャ――――!!フリージアが死んじゃったぁ―――― っ!!!」 レベッカ戦終了 (166で〆)
https://w.atwiki.jp/pasuo/pages/13.html
MGS4とは・・・・
https://w.atwiki.jp/2chmgo2pc2/pages/156.html
【MGS1】ソリッド・スネーク風 部位 パーツ名 色 必要rwd 備考 バンダナ ネイビーブルー 3000 Tシャツ(ロングスリーブ) スレートグレイ 500 LOWER BODY ネイビーブルー 1000 タクティカルアーマー(Cタイプ) ネイビーブルー 300 レッグホルスター(スネークスタイル) ブラック 2000 ハードナックルグローブ (固定色) 50 タクティカルブーツ&ニーガード(RATPT01採用タイプ) ブラック 1000 - - - 武器 Mk.23/MP5SD2 合計rwd 7850 迷彩効果区分:その他 備考 ソリッド・スネーク(Solid Snake)。隠密潜入のエキスパート。 武装要塞国家アウターへブンやザンジバーランドに単身潜入し壊滅させるなど、過去二度に渡り世界をメタルギアの脅威から救った伝説の英雄。